21世紀のコミュニティ・スポーツクラブと

クラブライフの振興に関する国際シンポジウム

 

フォーラム日本の総合型クラブの現状と課題

「総合型地域スポーツクラブ育成の成果と広がり」

野原 浩昭(富山県総合体育センター スポーツ専門員)

 

 富山県の西部に位置する福野町は、散居村で有名な砺波平野のほぼ中央にあり、人口約1千人、小学校、中学校、高等学校がいずれも校、面積31.71平方キロメートルのコンパクトな町である。古くから商工業、農業が盛んで、最近は機械工業が発展してきた。昭和52年の「健康都市宣言」で「町民一人1スポーツ」を提唱して以降、昭和62年から年間文部省の「地域スポーツクラブ連合育成事業」を実施し、地域にある同好会やチーム、小さなクラブを有機的に結んでつの地区すべてに「地域スポーツクラブ連合」、それらを統括する中央に「福野町スポーツクラブ連合」を設立、「草の根スポーツ」の振興を進めてきた。これらの経緯から平成年より年間文部省の「総合型地域スポーツクラブ育成モデル事業」を実施、福野町スポーツクラブ連合を推進母体とし、各スポーツ団体が連携して、平成10年に福野町体育館を活動拠点とし正式に「ふくのスポーツクラブ」が設立された。

 「いつでも どこでも だれでも楽しいスポーツの町 ふくの」を目指し、組織、施設、事業、活動の4つのオープン化を進めている。組織のオープン化では、既存スポーツ団体間の連携を強めるために、「福野町一周駅伝競走大会」や「チャレンジデー」などの共同事業を開催したり、代表理事制による運営母体を形成したりし、それぞれの独自性を生かしながらクラブに協力できる運営のあり方を提案している。施設のオープン化では、地区体育館のフランチャイズ制や利用促進を図る巡回スポーツ教室のほか、町内11箇所のタッチパネル端末から各スポーツ施設の利用状況検索、利用申込み、スポーツ教室の開催状況検索、参加申込み、指導者検索等を可能にするスポーツ施設コンピュータネットワークシステムの導入によって、より開かれた身近な施設を目指している。事業のオープン化では、2,000名の町民を対象に行ったスポーツに対する意識調査の結果をもとに、これまでの事業をスクラップ&ビルドし、より多くの参加が望めるようレクリエーション種目の導入やブームに合わせたメニューの展開、他の機関とのタイアップ事業を積極的に進め、参加率の向上を目指している。活動のオープン化では、これまで行われていた各種団体の活動を開いて教室化しオープンスポーツセミナーとして自主開催していただくことで、多彩なメニューの提供、それによる会員・参加者の増加と地域指導者の発掘を実現している。また、中学校運動部活動と連携したジュニアスポーツスクールもバスケットボールやバドミントン、卓球など 8種目を開催しており、より高い技能を求める生徒や部活動以外の種目での活動を求める生徒が多数参加している。さらに、剣道ジュニアセミナーのようにスポーツ少年団、中学校剣道部、高等学校剣道部、剣道協会、剣友会が週に 1度大アリーナに集まり、互いに剣を交え、指導者の交流や一貫指導体制の確立に役立っているメニューも展開しており、この動きを他の種目にも広げられるよう検討されている。

 現在、会員数は町民の約22%に当たる約3,350名を有しており、今もなお増加傾向にある。昨年までは、各スポーツ団体や一般会員から選出された36名の代表理事が6つの部会に分かれて各種事業の企画・運営を分担していたが、平成14年度からは、「NPOふくのスポーツクラブ」として法人化し、部会をつに再編統合、専任の事務局長を配置し、さらに自主的な運営が進められるように体制が整った。

 平成14年度のプログラム数は54(体験会、教室14、ジュニアスクール8、セミナー26)と多彩で、各年代層、性別のニーズに応じたものを展開しており、それが会員数の確保につながっている。会員数の増加と共に自主財源(会費収入と受講料収入)も増加しており、平成14年度は、約850万円を見込んでいる。これは、本事業実施以前の福野町の生涯スポーツ振興のためのソフト事業費約300万円をはるかに上回っており、受益者負担の理解と財源の効率活用と併せて事業の成果として挙げられている。

 平成11年に行われた文部省の科学研究費補助金によるプロジェクトでは、ふくのスポーツクラブの社会公益性を20歳以上の全町民を対象に質問紙調査された。その結果、設立のメリットとして回答のあったものは、「スポーツ参加率の向上」(1位52.8%)のほか「人との交流」(49.6%)「子供の健全育成」(38%)「高齢者の生きがいづくり」(4位3.5%)「まちづくり・活性化」(位33.6%)となっており、総合型地域スポーツクラブ育成の目的として挙げられていることが参加者の実感として認められていることが発表された。また、活動の満足度では、「仲間との交流」(173.7%)「誇り・所属感」(69.5%)といったものが上位に食い込んでおり、活動そのもののほかにもクラブに入会することで得られる満足感が認められた。さらに、年間に参加したボランティア活動では、会員が一般の町民に比べ「行事・イベント」「環境整備」「福祉」「教育」のいずれにおいても、倍以上の参加比率を示した。これは、クラブが様々なボランティア活動に関わっていることと自ら主催するイベントにおいて、会員をボランティアとして活用していることが考えられる。平成12年にも行われた同プロジェクトでは、クラブ員の運動時間、チーム加入者、民間スポーツクラブ加入者と比較され、これにおいてもクラブの活動によるある程度の成果が発表された。さらに、福野町成人国民健康保険加入者の平成月以降42ヶ月間のレセプトデータが調査され、非加入者が人当たり総医療費約91千円、チーム加入者が約89万円、民間スポーツクラブ加入者が68万5千円、ふくのスポーツクラブ会員が非加入者に比べ年半で約27万円、年間平均約万円も低額であったことを示し、クラブ加入によるスポーツ活動によって得られた健康や交流が、医療費の減額という成果となって表われたものと考えている。

 これらふくのスポーツクラブ設立の成果は、近隣市町村の総合型地域スポーツクラブ
育成の呼び水となり、小矢部市(「おやべスポーツクラブ」平成12年5月設立、会員数約850名)、福岡町(「遊・Uクラブ」平成14月設立、会員数約400名)、福光町(「福光スポーツクラブ」平成14月設立、会員数約700名)が設立を終え、活動を展開している。そして、この地区による広域的な育成は、県内の総合型地域スポーツクラブ育成を大きく進展させたと考えられる。さらに多くの市町村やスポーツ団体がその準備を進めるようになった。魚津市では小学校の全面協力による「大町スポーツクラブ」(平成12月設立、会員数約200名)、公民館横の新設地区体育館での活動を中心にした「天神文化スポーツクラブ」(平成13月設立、会員590世帯)のつのクラブが設立を終えた。また、県のボート協会が設立した「JINZU SPORTS CLUB」(平成14月設立、会員数約150名)、広域スポーツセンターモデル事業の一環として県の拠点施設「富山県総合体育センター」で育成された「パレススポーツクラブ」(平成14月設立、会員数約1,100名)などが次々に育成され、富山県内にはこれまでに10の総合型地域スポーツクラブが設立され、今後もその広がりを見せている。

 富山県広域スポーツセンターでは、「公益性」「選択性」「生きがいづくり」「コミュニケーション」を総合型地域スポーツクラブ育成のキーワードとし、各市町村やスポーツ団体、学校関係者等を対象に説明会、研修会を開催している。より多くのスポーツ団体や各種団体、地域住民の方々が連携し、互いのメニュー、ノウハウを提供しあって共通の活動の場であるクラブを盛り上げていただけるよう提案するとともに、広報活動や人材の養成・派遣を通して育成・定着の支援を行っている。総合型地域スポーツクラブの育成は、社会教育の基盤を作り、健康・生きがいづくり、地域交流・地域活性化へとつながり、最終的にはまちづくりにも寄与できる事業として期待している。今後も総合型地域スポーツクラブの全県展開、全国展開に向けて努力していきたい。



   ※この文章は、「21世紀のコミュニティスポーツクラブとクラブライフに関する国際フォーラム」
             Feb14-16.2003のP244〜246より抜粋したものです.

 


フォーラム「日本の総合型クラブの育成と課題」
(平成15年2月14日〜16日)

 


  1.野原 浩昭(富山県総合体育センター スポーツ専門員)
  2.小杉 誠  (うつくしま広域スポーツセンター プロジェクトマネジャー)
  3.藤井 利光(兵庫県教育委員会地域スポーツ活動室 室長)
  4.書川 辰郎(鹿屋市教育委員会 教育次長)

  コメンテーター:長登 健(文部科学省スポーツ・青少年局生涯スポーツ課 
                                     スポーツ指導専門官)
  司会・コーディネーター:松澤 淳子((財)自由時間デザイン協会)
 

 

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