第3回総合型スポーツクラブ育成推進研修会 議事録

◎講義
 「総合型地域スポーツクラブ育成モデル事業の実際とこれから」
   講師  文部省体育局生涯スポーツ課 スポーツ指導専門官・課長補佐  坂元 譲次

なぜ総合型なのか
・平成9年度の体力・スポーツに関する世論調査の結果、スポーツ実施率が上昇しつつあり、21世紀の早い時期に週1回以上の実施率を、ヨーロッパ先進国並みに引き上げたいというのが目標である。文部省の生涯スポーツ課で実施している施策プロジェクト(スポーツライフ21プロジェクト)の中核に、受け皿としての総合型地域スポーツクラブの育成モデル事業がある。全国に約6万ある公共スポーツ施設は、1施設あたり平均5、6クラブで、同一種目・同世代・機能に則した教室の実施・チーム志向などにより、なかなか新たな地域住民の参入が困難というのが実態である。これらの活動が何年か経過した時に、高齢化、マンネリ化することが多々見受けられ、まさに参加している人達だけのクラブになっており、公益性からみてもほど遠いような状況である。いつでも誰でも気軽にスポーツのできる環境を構築し、スポーツ文化を地域に定着させるという意味でも、総合型地域スポーツクラブは必要不可欠で、育成していく意味がここにある。

○総合型のメリット

・ クラブの継続性が確保される。
・ 多様な地域住民のスポーツニーズに対応することが可能である。
・ 規模拡大によるメリットがある。(指導者、運営の合理化、安定財源、公共性確保)
・ 子供から大人までの幅広い世代間の交流ができる。(地域のコミュニティーの形成に寄与)
・ スポーツ施設の効率的な使用ができる。
・ 地元地域でスポーツに参加する機会が増大する。(スポーツ人口の拡大)

○なぜ地域なのか

・ 学校、職場におけるスポーツの限界(同一種目、同世代、会社という同一組織、教員・指導者の高齢化、子供のニーズに則したスポーツ活動の場がない)
・ 国民の意識変化(物の豊かさから心の豊さへ、職場から地域・家庭へ)
・ 自由時間の増大(労働時間の減少、高齢化社会、家庭や地域で過ごす時間の増大)

○クラブの育成・普及が進まない理由

・ 総合型スポーツクラブのイメージが浸透していない。
・ 現状肯定傾向である。
・ 今の日本では、時期尚早であると考えられがちである。
・ 体育協会、各競技団体、体育指導委員協議会などの組織との合意形成が困難である。
・ 運営費の確保が困難である。(国民においては、お金を払ってスポーツをするという意識が薄い)
・ コーディネート役(中心的役割)がいない、または見つけられない。
・ 活動施設の確保が困難である。

○クラブ育成までの課題

・ 教育委員会を始めとした地方公共団体の意識改革 → スポーツ教室、イベントの実施で多忙から地域住民の自主的活動を支援。
・体育協会を始めとした各スポーツ団体の意識改革 → 競技力向上に目がいき、普及、推進に関してはあまり熱心ではない。
・ 既存のスポーツクラブの意識改革 → 門戸開放
・ 体育指導委員など既存スポーツ指導者の意識改革 → クラブ育成の中心的役割
・学校の意識改革 → 地域スポーツ活動との共生(少子高齢化で学校の部活動が、一部では、団体競技として成り立たなくなっている)
・ 国民全体の意識改革 → 受益者負担(受け身型でなく、自分達で積極的に取り組んでいく)

○設立の成果

<スポーツ文化の拡大>
・親子で様々なスポーツ活動への参加
・スポーツに対する意識の変化(自分達が自分達の手で運営する)
・異種目間の指導者交流

<地域の有為な人材の発掘>

・指導者の活躍する場の提供

<施設の有効活用>

・定期的な公共スポーツ施設の有効活用

<地域住民の主体性の確立>
・会費の徴収で会員の自覚

<地域のコミュニティー形成>
・スポーツ以外にも様々な交流の場が生まれる

<地域の教育力の回復>
・地域の教育意識の深まり
・世代のタテのつながり、連帯感の強化

<地域の健康水準の改善>

・健康の保持増進、医療費の減少(自治体の財政にも寄与している)
  *経済的効果については、今後2年で調査する予定である。

○現状の問題点

<自主運営>
・地域のスポーツニーズの把握が完全にできていない。
・各スポーツ団体、学校への合意形成が不十分である。
・地域住民に受益者負担という意識がない。
・モデル事業の時から会費を徴収する形になっていない。

<指導者>
・ボランティア指導者に対して加重な負担になっている。

<在り方>
・施設の活用方法が不十分である。
・公益性の確保、社会的な認知度が低い。
・クラブハウス、拠点施設機能が不足しているため、会員の帰属意識が低い。

○今後の課題

・ きめ細かい事業展開が必要である。(スポーツ事業の精選)
・ より一層のクラブ員の意識改革が必要である。
・ 補助金のみの運営では困難である。(長期的計画に基づいた財源確保策、受益者負担の必要性の理解の促進。)
・ 拠点となる身近な施設の整備。(学校の余裕教室の有効活用も1つの方策)
・ 大きなスポーツ施設の管理運営を住民へ移行する。
・ 競技力向上を求めたい人も受け入れる。
・ スポーツ少年団、学校の支援を促す。
・ 体育協会、各競技団体との連携を強化する。
・ 指導者の高齢化への対策を講じる。
・ 事務局体制の整備を進める。
・ スポーツの普及と会員の拡大を図る。
・ 会員間の交流を推進する。
・ NPO法人等の法人格の取得を図る。
・ スポーツに限らず、生涯にわたる文化活動も取り入れた機能を高める。

○どのようなクラブが存続していけるのか

・ 相当の会費収入があり、財源の確保ができる。
・ 拠点施設がある。(交流のためのたまり場的存在、クラブハウス)
・ 会員の満足度が高い。(メリットが見える)
・ クラブでの人間関係が良好である。
・ 会員各自に役割があり、自己実現の道がクラブの中にある。
・ 民主的に運営している。
・ 社会的に認知されている。
・ いろんな活動をクラブの中に積極的に取り入れている。

○まとめ

 単一種目でなく、多種目で障害者も含めた多世代型スポーツクラブで、有資格の指導者が指導するというのが文部省としてのモデル、理想である。また、今年9月22日に開催された保健体育審議会において、
・生涯スポーツ社会の実現に向けた地域におけるスポーツ環境の整備充実
(総合型スポーツクラブの機能、継続的・安定的に運営していく体制組織、活動拠点のあり方、企業のスポーツ施設の活用効果、スポーツクラブを支援していく広域スポーツセンターのあり方、スポーツ振興事業のあり方、学校体育施設共同利用化の一層促進、青少年の体力向上)
・我が国の国際競技力向上の総合的な効果
・生涯スポーツ・競技スポーツ、学校体育との連携
などが議論され、来年の夏、答申をいただく予定になっている。また、平成14年度からスポーツ振興くじの収益金配分がなされるが、そのときにクラブの条件が示されるのではないか。単にみんなでスポーツ活動をやって楽しかった、というのでは公益的な意味を持たない。将来のビジョンを明確に持って取り組んでいく必要がある。
富山県は生涯スポーツの面で非常に積極的に取り組んでいる。福野町に限らず、各市町村でクラブを立ち上げていただき、全国のモデルとなっていただきたい。今後の活躍を期待する。

質疑応答
  「市町村における総合型地域スポーツクラブの育成と定着について」
     司 会   富山県教育委員会体育課生涯スポーツ係長  二上 敏博
    事例発表 「ふくのスポーツクラブ」理事長      寺井 克明
    助言者   文部省体育局生涯スポーツ課調査係長    長登  健
           筑波大学体育科学系講師          西嶋 尚彦
 1) 先進事例に見られる効果的な育成方法について
 2)各市町村の実情に即した効果的な育成方法について
 3)質疑応答

■委員

・スポーツ少年団、学校の部活動を取り組む展望はあるのか。 

■ふくのスポーツクラブ理事長

・スポーツ少年団に関しては、立ち上げる少し前からスポーツクラブができるという情報を流して勧誘し、現在ほとんど入会してもらっている。
・中学校に関しては、少し出遅れているが、個人的に趣味を活かして指導している指導者が若干おり、今後は学校との協議を経て、部活動の内容を部分的に学校とスポーツクラブに分けていく、という案が出ている。
・高校に関しては、多市町村の方がおり、今の段階での構図はないが、いずれ中学校同様になるのではないか、という気はしている。また、高校生が中学生に教えに来る方が身近なような気もしている。

■委員

・指導者(顧問)である学校の先生はどう活用していけばいいのか。また、部活動との関係はどうなるのか。

■ふくのスポーツクラブ理事長

・これからの話し合いのなかで先生方の意見を伺いたい、という段階である。

■委員
 
・第1回総合型スポーツクラブ育成推進研修会(10/13)において福島大学 黒須先生が、クラブ員数の変化について、
   ヨーロッパ 仮に10人 → 10年後=100人へ
   日  本   仮に10人 → 10年後=変わらず
と、述べておられたが、基本的な違い、何が原因でどんな解決策があるのか。

■西島先生

・黒須先生はチーム型の単一種目型スポーツクラブと比較して説明されたと思う。100年の歴史を持つヨーロッパのクラブでも、高齢化・少子化の影響でクラブ会員の減少問題に直面している。
<対策> 地元住民に家族ぐるみで活動拠点のスポーツクラブに参加してもらい、60歳以上の人には無償で教室を提供する。このようにマイナス面(活動が古くなり会員確保が困難)に対して、プラス面(慈善事業、チャリティー)で常に営業努力している。
<結果> 継続して20〜40年経過すると、会員数が増えていっている。住民の人口に対して一定の割合を越えている。

■ふくのスポーツクラブ理事長

・ふくのスポーツクラブが本格的なスポーツクラブになるのに、15年はかかりそうである。なぜなら、小中学生は強制的に部活動をさせられ、10代後半〜20代の若年層は、大半が高校の卒業と共に県外へ出ていってしまい、社会人生活を経て、大体30代以降になると地元に戻ってくるからである。この時が機会であり、ゆえに、15年かかると思うのである。もともとスポーツクラブに共鳴してくれるのは、30代から60代の年齢層が多いのが実状である。


◎助言

■筑波大学体育科学系講師   西嶋 尚彦

 ふくのスポーツクラブの事例については、長登先生同様ヒントになるところが多い。総合型地域スポーツクラブという名前にこだわらず、地域・クラブを中心にスポーツを通して活動を楽しむ、というふうに考えていく。

<期待される3つの機能・役割>
・運動スポーツ活動の推進(生涯スポーツ環境の実現)
・高齢化、少子化に関わる社会問題の解決(地域に公益的活動)
・市町村の人づくり、文化づくり、町づくりを目指す
 *スポーツクラブを作って盛んになったところで止まらず、地域のスポーツクラブを作るということを通して最終的には何を獲得するか。

<総合型地域スポーツクラブの特徴>
単一種目のチーム型クラブ(スポーツ消費) → 総合型地域スポーツクラブ(公益活動)
  大事な要素   ・経営力
            ・公益性
            ・指導力
            ・全地区カバー
            ・継続性
<推進にあたって>
・活動量を増やすだけではなく、市町村のPR、キャンペーンもカバーしていく。

<創設と育成の手続き>
・あわてて構想すべきではない。じっくり仕上げていくスタンスで、最終的には地域住民が進めていくもの。クラブの会員となって、ボランティアで公益的な活動を楽しんでいく。
・会員の方々が代表者を選定して、クラブの完成品のイメージを作り上げていく。完成品に向かっていくプロセスを先生方の知恵でアドバイスしていけばいい。
・NPO法人格の収益も見込める。(活動が拡大する可能性がある。)
・マネージメント体制(事務局)を作り上げていく。

*  *  *  *  *

文部省体育局生涯スポーツ課調査係長  長登 健
 福野の事例について、ヒントをたくさん与えていただいた。構想、育成について長い時間をかけ、一貫した住民主体の町づくり、健康づくり、体力づくりに取り組んできたことが伺える。

<総合型スポーツクラブで我々が捉えていること>
・生涯の各時期に、自分のスポーツニーズに応じて日常的にスポーツ活動、環境づくりをするもの。すなわち、生涯スポーツ社会の実現に向け、その中核になるものである。
・クラブの形を作ることが目的ではなく、地域住民の自主的意志に基づくプロセス、発展過程を重視するものである。
 日本では、クラブ=チームという形で捉えられていたと思うが、地域スポーツクラブとは、特定の学校、企業に属していないと入会できないというものではなく、誰もが気軽に参加できる住民が主体となって継続的に運営できるクラブ、ということを意味している。
 総合型は3つの多様性、総合性で満たされているのが理想である。その3つとは、
・多種目
・多世代、異年齢(例えば、小中学生も地域の住民であるということ)
・多様な技術レベル
であり、これらが全て満たされているのが理想だが、過程のなかで、地域の実状、ニーズによって何らか満たされているものがきっとあると思う。あくまでもプロセスである、と捉えてもらいたい。
 ふくのスポーツクラブは、モデル事業の先進例ということで全国にPRはできており、今後、クラブの先進事例を目指しての取り組みに期待する。さらに、今日お集まりの皆さんの力で、富山県が47都道府県のモデルの県となっていただけることを期待する。


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