第4回総合型スポーツクラブ育成推進研修会 議事録

◎講義
 「総合型地域スポーツクラブの重要性と戦略的な育成」
  (株)三菱総合研究所 中伏 達也

(1)スポーツを取り巻く環境とスポーツ政策の方向性

○スポーツ振興が直面する課題

・少子化、教員の高齢化による部活崩壊
・長引く不況による企業スポーツの衰退
・競技団体の硬直化による国際競技力の長期低迷

日本型スポーツシステムの限界

○2000年へのスポーツ政策の新しい風
・学校週5日制の導入
・サッカーくじ法の成立
・NPO法の成立
・PFI推進法の成立
・地方分権推進計画
・野茂、中田効果(海外スポーツ事情の認知、世論形成)

○スポーツ政策の方向性
・スポーツでも競争原理にもとづき、自己責任として、住民自身によるサービス供給や民間活力の導入などが進みつつある。
・自治体では、スポーツ振興を産業振興やまちづくりとして取り組むところも出てきている。
  例 : 「神戸アスリートタウン構想」
      「彩の国スポーツプラン2010」
・総合型地域スポーツクラブを、21世紀の社会づくりにおける重要なソフト(媒体)として重視

○21世紀のスポーツシーン
1)学校・企業から、地域へ
2)競技から、健康・生涯スポーツへ
3)行政依存から、民間活力導入へ
4)「する」「きわめる」から、「みる」「ささえる」「まなぶ」へ
5)一部の愛好者から、多くの人々へ
6)段階別指導から、一貫指導へ
7)日本的慣習から、世界標準へ


(2)総合型地域スポーツクラブの重要性と課題

○総合型地域スポーツクラブとは
・多種目 :複数の種目を自由に選択できる。シーズン制
・多世代 :子どもから高齢者までがそれぞれに役割に応じて参加(競技者、指導者、審判、お手伝い)
・大規模 :1000人以上(地域住民の20%以上)
・社交性 :住民の交流の場(パーティ、カルチャー等)
・自立性 :自主運営、ボランティア、独立採算
・平成7年度より、文部省がモデル事業を推進
・37市町村が指定(3年間の補助事業)

○スポーツ振興から見た重要性
・スポーツに対する多様なニーズへの対応
・スポーツをしたいけどできない住民に対する第3のサービス
・学校スポーツ、企業スポーツに替わる受け皿
・一貫指導体制による競技力向上

総合型地域スポーツクラブによるスポーツ振興

○スポーツに対する多様なニーズ
・多様な人々のニーズ
 ex.高齢者、障害者、女性、外国人
・多様な種目へのニーズ
 ex.ニュースポーツ
・多様な技術レベル・価値観へのニーズ
 ex.初心者からトップレベルまで、楽しむから稼ぐまで
・多様な関わり方へのニーズ
 ex.する、きわめる、みる、ささえる、いやす、まなぶ

○総合型地域スポーツクラブによる第3のサービス
・「スポーツをしたいと思うができない」は成人の約40%
・これまでの公共サービス → 「安いがサービス水準もそれなり」
 一般的な民間サービス → 「高くて種目が限られている」
 ↓
行政サービス、民間サービスの中間にある新しい社会サービスの創造の主体としての総合型地域スポーツクラブ

○まちづくりから見た重要性
1)コミュニティ活動の中心、拠点
2)学校、家庭、地域の連携
3)コミュニティビジネスへの展開

総合型地域スポーツクラブによるまちづくり

○総合型地域スポーツクラブ育成の課題
・既存クラブや団体の理解や参加を得るのが難しい
・複数のクラブを連合しただけに終わるケースが多い
・これまでのスポーツクラブとの違いが不明瞭である
・モデル事業終了後の財源が確保できない
・自主運営をする際のスタッフがいない  など

(3)総合型地域スポーツクラブの戦略的な発展方法
○課題解決のための戦略
1)魅力づくり戦略
〜「総合型」育成・参加に対するインセンティブの創出〜
 戦略1 : 活動拠点づくり
 戦略2 : 魅力あるプログラムづくり

2)自立戦略
〜クラブ自身による組織運営力の向上〜
 戦略3 : 組織体制の整備
 戦略4 : 安定収入の確保
 戦略5 : クラブマネージャの育成

(4)NPOとPFIの活用による21世紀のスポーツクラブづくり
○21世紀のスポーツクラブの理想像
 文部省体育局生涯スポーツ課長森氏の発言  『みんなのスポーツ2000.2』より抜粋
 「今後のクラブには、ぜひNPOやPFIという概念を導入していただきたいと思います。」

 「総合型地域スポーツクラブというNPOが、PFIを利用してスポーツ施設を自主的に整備・運営していくというあり方が、
 21世紀の日本のスポーツクラブの一つの理想像ではないかと考えています。」

○NPO法について
1)98年12月に「特定非営利活動促進法(NPO法)」が施行
2)わが国でも10人以上が集まればNPO法人として認証される
3)NPO法は、12の活動分野を対象
4)不特定多数かつ多数の者の利益が目的
5)収益事業をおこなってよいが、営利を目的としてはならない

○NPO法の12の活動分野
  1)保健・医療
  2)社会教育
  3)まちづくり
  4)文化・芸術・スポーツ
  5)環境保全
  6)災害救援
  7)地域安全
  8)人権擁護、平和推進
  9)国際協力
 10)男女共同参画社会
 11)こどもの健全育成
 12)NPOの活動支援

○法人格(NPO法人)の取得のメリット
  1)社会的な信用が高まる
  2)賃貸借契約、融資などの契約が可能
  3)明確なルールのもとで民主的な運営となる
  4)クラブの活動目標がクラブ員に共有できる
  5)紛争の予防や円滑な処理につながる
  6)民間企業に比べると採算分岐点は低い
  7)行政施設の管理運営受託などにふさわしい
  8)サッカーくじ収益金等を受け取りやすい

○NPOのリスク
・ただし、NPO法人を取得すれば安泰ということではない。
・収支が悪化すれば解散や合併もある。
・また、当面は税制上の優遇措置はない。

○スポーツNPOの基本的な考え方
・民間企業、行政、既存の公益法人では供給できないサービスを、住民が主体となって法人を設立し供給する仕組み
・より優れたスポーツサービスを多くの住民に、適正な対価のもとに供給していくことが求められる。(人件費を支払うことも可能)
・「アマチュア」のクラブから、法人格を持つ「プロ」のクラブへ

地域のベンジャー

○スポーツNPOの設立に必要となる人材
  1)起業家マインドをもち全体をリードできる人
  2)各種の書類作成に長けた人
  3)PTA役員経験があるなど地域の保護者等に顔の広い人
  4)行政との交渉経験や行政の仕組みに通じている人
  5)スポーツスクールの運営・指導の実績のある人
  6)地域の福祉やリサイクルなどの経験のある人
  7)簿記・会計など経理事務に明るい人
  8)拠点施設の近隣に住まいがある人
  9)広報・宣伝・マーケティング等の経験のある人
 10)比較的自由になる時間が多く、フットワークの軽い人

○NPOの申請に必要となる書類
 ・設立認証申請書
 ・定款
 ・役員名簿
 ・各役員の就任承諾書
 ・各役員の住民票
 ・各役員の宣誓書
 ・報酬を受け取る役員の名簿
 ・会員の名簿(最低10人)
 ・団体の活動の確認書
 ・設立主旨書設立者名簿
 ・設立総会の議事録
 ・設立当初の財産目録
 ・設立初年の事業計画書
 ・設立2年目の事業計画書
 ・設立初年の収支予算書
 ・設立2年目の収支予算書

○PFI(Private finance initiative)によるスポーツ施設整備のメリット
<PFIとは>
・PFIとは、従来、公共事業として行なっていた事業のうち、民間に任せた方が効率的なサービスを提供できる場合は、民間に任せることで、社会資本の整備充実を推進するもの。
・自治体が土地を貸与。クラブ(又は民間企業)がスポーツ施設建設・運営。行政と住民が有料で利用。
・99年7月にPFI推進法。(民間資金等の活用による公共施設等に関する法律)が成立。

<PFIのメリット>
・民間企業は需用が見込める好立地でビジネス。
・行政は多大な初期投資を削減。
・地域住民は質の高いサービスを享受。

○NPOとPFIの活用によるクラブづくりの戦略
  (1)スポーツNPOづくり(10人集める)
  ↓
  (2)クラブの活動拠点や事業展開を決める
  ↓
  (3)学校プールのドーム化(クラブハウスの併設)
  ↓
  (4)水泳・アクアビクス等のスクールの実施
  ↓
  (5)サッカー、バスケ、エアロビ等にスクール展開(グランドの芝生化、夜間照明等)
  ↓
  (6)学校運動部活動や体育授業等への指導者派遣
  ↓
  (7)多種目・多世代型のコミュニティスポーツクラブの実現


講義
 「ふくのスポーツクラブの設立と今後の課題」
  ふくのスポーツクラブ理事長 寺井 克明

1.ふくのスポーツクラブの設立の経緯
 平成8年度から「総合型地域スポーツクラブ育成事業」(平成10年度まで)
 教育委員会及び派遣社会教育主事(以下派スポという)が中心となって、福野町の主なスポーツ団体あるいは地域住民への協力依頼

          教育委員会、派スポ → 福野町体育協会(以下、体協)
                          福野町体育指導員協議会(以下、体指)
                  ↓       福野町スポーツクラブ連合(以下、連合)
                  ↓       ↓
                  地 域 住 民

・総合型の実態がよく把握(理解)できない(将来への疑心)
・中心的(核)となる人物、団体(組織)はどうすればいいのかわからない。
 連合は勝手に自分たちが中心とならなければと思っていた。
 派スポもどちらかといえば、連合主導と考えていた。
 体指は連合とほぼ同じ考え方であった。
 体協はいささか冷めていた。
・教育委員会及び派スポは、ねばり強く説明(説得)する一方で、ハード面では着々とすすめていった。
・第1回目の全体会議(連合・体協・体指)では、平行線であった。
・その後も個別にではあるが、話し合いが繰り返された。
 スポーツに隔たりはない。
 世の中の流れに取り残されるという危機感(体協内部に)
 駅伝と同様に、みんなで創りあげるという意識改革。
・三位一体となって創りあげることをお互いが確認し、設立となった。
   
 設立への大きな要因は、連合の存在と体指との連帯及び『FASC』の体制であった。

2.ふくのスポーツクラブの現状
 今年は試行錯誤の年だから、今までの真似事でいいからみんなでやってみよう。
 失敗を次のステップとしよう。

 4つのオープン化による運営
 1)組織のオープン化
  多方面からの人材による共同組織運営(実行部隊による運営)
  各部会(6部会)のオリジナルを発揮し、自分たちによる企画・運営
  理事メンバー(36人)
  一般会員5人・各地区スポーツクラブ連合14人・体協6人・体指7人・B&G育成士2人・学識経験者2人

 2)施設のオープン
  各地区に体育館もしくはコミュニティーセンターがある。
   『いつでも どこでも だれとでも』
  (各地区連合の活動によるスポーツ人口の増加により、活動拠点の必要性が生じ、地区民の総意として施設が設けられた)
  その地区だけの施設という意識からの脱却。

 3)事業のオープン
  住民のニーズやブームも考慮した教室・セミナーの開催。
  イベント時に商工会や婦人会とのタイアップ。
  スポーツ少年団・中学校の部活動への参画(仮称:部活動の第2ステージ的役割)
  民間スポーツクラブとのタイアップ

 4)活動のオープン
  会員であれば、どれでも(いくつでも)参加自由(高齢者にも配慮)
  こんな種目を指導してみたい。
  体協もジュニア育成の場となっている。(底辺の拡大)
  各セミナー自主性やオリジナル → 閉鎖的なクラブからオープンなクラブへ

3.ふくのスポーツクラブの課題
 1)「ふくのスポーツクラブ」のPR不足
 2)事務局とクラブハウス的な施設の問題
 3)役員及び指導者の日常業務との兼ね合い

4.ふくのスポーツクラブの効果
 1)潜在的にスポーツをしたいという人が表にでてきた。
   多種目により多世代に対応できる。

 2)ボールゲームにとらわれないスポーツにも注目されてきた。
  太極拳セミナー・shall we dance?セミナー・ソフトエアロビクスセミナー 他

 3)参加者がいきいきとしている
  フォークダンスセミナーの意欲
  在日ブラジル人を含めたフットサルセミナー
 
 4)親子での参加が多くなってきた。
 
 5)施設の使用効率がよくなった。

 6)受益者負担が少し理解されてきた。
  会員数  約2,700名(平成12年2月20日現在)
  年会費  小・中学生         : 1,000円
        一般(16〜59歳) : 2,000円
        60歳以上     : 1,000円
        幼児・身障者手帳のお持ちの方 : 無料

  ただし、チーム(団体)会員は2割引き


5.ふくのスポーツクラブの展望
 1)現在の活動を通じて「ふくのスポーツクラブ」の存在を認知してもらう。
  会員数の増加 → 自立

 2)行政とのタイアップ
  施設の管理・運用を行政と協力して行なう。

 3)NPOの取得
  NPOの取得により社会的に認知された団体となり、スポーツを通して社会に貢献する。


戻る