サンデー暮らしINとやま /医療・福祉 総合型地域スポーツクラブ

平成13年9月2日(日):北日本新聞

○各地で誕生 参加の輪拡大  

 地域住民が主体的にスポーツに取り組む「総合型地域スポーツクラブ」の設立が県内で相次いでいる。スポーツに対する価値観の多様化に応じ、複数種目の活動の場を提供。気軽に楽しみたい初心者から、競技選手まで広く対応している。県はクラブの推進を、とやま国体後のスポーツ事業の柱にしており、学校運動部活動の指導者不足などスポーツが抱える問題を解消する取り組みが進んでいる。

 

○初心者から選手まで  ジュニアの一貫指導も狙う

 県内で最も早く平成10年に発足した福野町の「ふくのスポーツクラブ」には、現在、幼児から80代までの約3000人の会員が所属している。硬式テニスなど有料の15の教室、会員無料で幅広く門戸を開いたビーチボールなど24のセミナー、さらに中高生を対象にした卓球など7のジュニアスポーツスクールがあり、いずれも多くの参加者を集めている。

 教室、セミナーには初心者から競技選手までが参加。住民のスポーツへの多様なニーズに対応している。会員を中心に町ぐるみのイベントにも参加し、スポーツを通じてコミュニケーションの場を広げている。

 ジュニアスポーツスクールは、これまで中学と高校で分断しがちだった指導を一貫したものにするのが狙い。学校部活動に所属する生徒も、部活動終了後や、別の競技を選ぶなどして参加し、中高の剣道部が週1回、スポーツ少年団の児童も交えてクラブで合同練習するなど、学校との連携も進めている。

 ジュニア層を中心に競技人口が増えることで、底辺の拡大が図られる。セミナーから生まれたサッカーチームのジェニオス全国クラブユース大会に出場するなど成果を上げている。

 

○多くの自治体で構想

 「ふくのスポーツクラブ」の活動が周辺自治体を刺激し、福岡町や福光町でも設立の動きが進んだ。県は13年度から10年間の新世紀スポーツプランでクラブ設立を推進しており、富山市や高岡市なども計画を進めている。人口32万人余の富山市は各小学校区単位のクラブになる予定だ。クラブは現段階で主に行政が主導しているが、住民の主体的運営が理想だ。行政から運営費の助成を受けている「ふくのスポーツクラブ」は本年度中にNPO法(特定非営利活動促進法)のもとづく法人化申請を行い、これまで以上に自主的な運営を目指す。

 また、富山市のひがしスポーツクラブのように民間で運営するクラブも生まれている。

 

○競技団体も設立へ

 競技団体も設立に向け動いている。県ボート協会は細入村の県漕艇場を拠点としたクラブを発足させ、本年度中にも初心者にも開かれた活動を始める予定。エアロビクスなどボート以外のスポーツも行い、周辺の学校など地域とのつながりを強めていく。

 インテックボート部前監督の村本久男県ボート協会強化部長は「とやま国体に向けて勝利至上主義で競技に取り組んできたが、スポーツの原点である『楽しさ』に立ち戻りたいと考えた」と話す。漕艇場の使用時間帯を振り分け、トップレベルの競技選手と初心者の活動の両立を目指す。

 クラブによって運営母体や形態は異なるが、いずれも地域との密着を目的にしている。

 地域コミュニケーションが希薄な今、だれもが楽しむことから始まる新しいスポーツ文化をつくり上げることが求められている。

名称 場所 会員数 活動の特徴
ふくのスポーツクラブ 福野町 約3,000人 多彩な教室、セミナー開催、学校や民間スポーツクラブとの連携
スポーツオアシスゆうゆう 立山町 募集中 公民館などを活用し、地域に根差した活動
大町スポーツクラブ 魚津市 約200人 国体選手を招いた教室の開催
天神スポーツクラブ 魚津市 約500世帯 地区の全住民が会員
おやべスポーツクラブ 小矢部市 約650人 エアロビクスなど6教室が核
JINZUボートクラブ 細入村 募集中 県内初の競技団体によるクラブ
パレススポーツクラブ 県総合体育センター 約800人 施設を中心にした運営のモデル作り
ひがしスポーツクラブ 富山市 約460人 サッカーのクラブから発展。民間の自主的運営
遊・Uスポーツクラブ
(13年度中に正式発足)
福岡町 約200人 多種目の同時展開で自由に選べる

 

○ポイント点検  住民の主体性がカギ

 スポーツに参加する人は、競技選手や気軽に楽しみたい人など目的がさまざまだ。「スポーツを始めたいが、きっかけがない」という人や、活動の場を得られない選手、指導者もいる。クラブの最大の利点は、スポーツに対する異なるニーズに、組織や立場を超えた活動で柔軟に対応できる点にある。

 現在、スポーツ少年団や中学、高校の部活動に一貫性がないこと、指導者不足などが問題とされている。少子化傾向がそれに拍車をかける。14年から学校完全週5日制が予定され、部活動以外にも体育教育の受け皿が必要だ。企業も、相次いでスポーツから撤退している。

 クラブはこれまで別々に活動していた選手、指導者、一般住民に共通の場を提供しスポーツの底辺を拡大させる。

 財源面でも行政や企業によるスポーツへの支援には限界があり、スポーツに取り組む会員が受益者負担をするクラブの活動が求められている。

 県内スポーツ界は、昨年のとやま国体に向け、強化を優先した活動を行ってきた。だが、国体後は強化費が大幅に減るなど、競技団体、学校、企業に支えられてきた従来の方法が転換期を迎えている。クラブには選手の発掘、育成の場としての役割も期待されている。

 ただ、参加者や運営協力者が十分に確保されなければ、財源も集まらず円滑な運営は期待できない。クラブが成果を上げるかは、地域住民がどれだけ主体的に取り組むかにかかっている。

 

○ひとこと

自由が制限されそう  魚津市本江新町、会社員、寺岡修治さん(45)

 スポーツは大好きで、休日には友人と一緒にゴルフをする。趣味程度にスポーツをしたいので、指導者のいるようなクラブにはあまり入りたいとは思わない。クラブとなると、のびのび自由にスポーツを楽しむことが制限されるような気がする。

 

年代超えた交流魅力  福野町柴田屋、会社員、富永健司さん(46)

 楽しそうにバドミントンをしているのを見て、クラブに入会した。小学生から一般まで幅広い年代と交流できるのが何よりの魅力。楽しいだけでなく、中学生に教えたり、上手な人と試合をすることで技術も磨ける。

 

競技会、今後どう変化  高岡市石瀬、高校教諭(陸上部顧問)、井山嗣夫さん(34)

 クラブには、選手を小中高と系統立てて指導できるメリットがある。時代の流れでもあり、クラブ化は早い方が良いと思うが、指導に当たるには勤務体系の考慮などバックアップが必要。成果発表の場である競技会がどう変化するのかも課題だろう。

 

選手経験者生かして  富山市奥井町、自営業、大久保肇さん(49)

 小学校ではクラブ、中学校以上は部活動に参加するが、社会人は組織化されたものが少ないのが現状。インターハイなどに出た知人は多く、今年私の長男も全国大会などに出た。地域クラブで彼らの経験を生かさなくてはならないと思う。

 

目標別で考えるべき  富山市水橋畠等、公務員、佐竹俊一さん(32)

 全国大会などを目指して競技力向上を目指すクラブと、スポーツを楽しみ、健康増進を目指すクラブは分けて考えるべきでは。自身の経験からも言えるが、目標の違う人が同じクラブで同じことをしようとするとうまくはいかないと思う。

 

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