介護保険見直し 本社全国調査 予防事業で高齢者筋トレ「杖なしで歩けるよ」

                                                     平成16年11月11日(木):読売新聞

 制度開始以来の大幅な見直しが来年に迫った介護保険制度。最大の焦点である保険料負担者とサービス受給者の対象範囲の拡大について、市町村長の7割が反対であることが、読売新聞社の全国自治体アンケートでわかった。「予防給付」新設に伴うサービスの一部利用制限や、事業者の指定・監督権限の移譲については、保険者である市町村の間で意見が分かれた。制度が定着し、今後も給付増が見込まれるなか、保険運営のかじ取りに悩む市町村の姿が浮き彫りになった。(社会保障部・針原 陽子、本田 麻由美)

 「ここに通う前は、杖をついて、前かがみで歩いていた。今は、杖もいらないぐらいだよ」

 東京都豊島区が今年度から、池袋スポーツセンターなど2か所で開催している「高齢者筋力向上トレーニング」。約2ヶ月前から参加している竹内友一さん(83)は、そう言って、軽快に歩いて見せた。

 週2回、1回90分のプログラムには、60歳代後半から80歳代までの男女15人が参加。トレーニングマシンを使い、「立つ」「転ばないようにする」ために必要な筋肉を鍛えている。

 「要介護1」の夫(81)と一緒に参加していたす鈴木光江さん(75)も、「夫がここに通うバスの中で、立ったままでいられるようになった」と喜ぶ。

 同区がこの事業を始めたのは、「要支援」「要介護1」の認定者が増え、給付金がかさんでいるため。効果については「まだはっきりしない」(同区)ものの、3ヶ月間の講習を終えた13人は全員、歩く速さや動作に移るまでの時間などで改善が見られたという。

 「予防事業は重要。より効果的な実施方法を考えたい」と、同区中央保健福祉センターの伊藤万利子さんは話す。

 介護予防の重視は、制度改革の大きな柱の一つ。改革案では、「新・予防給付」の導入と、取れに伴う要支援、要介護1の人に対し、家事援助など一部サービスの利用が制限される見通しだ。この点について調査では、賛成53%、反対45%と賛否が分かれた。

 「制度開始時に比べ、『要介護1』は2倍以上に増えた。予防効果のあるサービスを提供して、悪化をくい止めたい」(茨城県内の市)など、賛成の自治体からは、軽度者の対する予防効果を期待する声が相次いだ。

 「買い物代行などないと生活困難」

 一方、反対する自治体の多くは、「家事サービスの利用によって、在宅生活が支えられている人が多い」(71%)という現状を挙げた。

 特に、山間部の自治体からは、「一人暮らしの要介護者などは、買い物を代行してくれるヘルパーのサービスがないと自宅での生活が難しい。一律に家事サービス利用をを制限することのないようにしてほしい」(鹿児島県宮之城町)といった意見が相次いだ。

 「新・予防給付」は、保健師や経験を積んだケアマネジャーなどがプランを作成、民間事業者などがサービスを提供する方向だ。この点について、「小さな自治体では、専門職の確保は難しい」(北海道内の町)「サービスの担い手が足りず、メニューにあっても提供できない市町村が多くなるのでは」(滋賀県伊吹町)との懸念が強い。

 辻一郎・東北大教授は、「調査を見ると、規模の大きい自治体は賛成、小さい自治体は、人事やサービス事業者の確保などに不安を感じているようだ。県が事業者の適正配置に配慮し、民間事業者がサービスに乗り出しやすい工夫を行う対策が必要ではないか」と指摘している。

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