スポーツの現場 平木泰章記者
 “企業丸抱え脱却の道示す” 快進撃支えたものは何 「KUROBE」が女子V1リーグで初優勝

                                                      平成16年5月20日(木):毎日新聞

 今年1月から行われたバレーボールの第6回女子V1リーグで、富山県黒部市に本拠地を置くクラブチーム「KUROBEアクアフェアリーズ」が初優勝を果たした。先行き不透明な経済、出口の見えない不況の中、企業チームが続々と撤退を決めている。結果として、休廃部となった企業チームを母体としたクラブチームが各地に誕生してきた。ところが、「KUROBE」は、スタート時から“純粋”なクラブチームだ。快進撃を見せたクラブチームを支えたものは何だったのか。

地域の力

 KUROBEは、00年の「とやま国体」に向け、「国体で優勝できるチームを」を合言葉に、県バレーボール協会が中心となって98年に結成。富山県出身で東洋紡、東芝で指揮をとった石川春樹氏を監督に迎えた。翌年は全国実業団優勝大会で優勝し、V1リーグの出場推薦を受け、同リーグに出場。国体では準優勝を果たした。

 選手はそれぞれ地元の企業や団体に勤務している。職場の理解のもと、勤務を早めに切り上げると、黒部市総合体育センターに集まってくる。試合や遠征の際には地元企業からバスを借りたり、社宅を提供してもらったりと、全面的なバックアップを受けている。

 年間2000万円近くかかるという運営費は、後援会費、県体育協会から県バレー協会に出る強化費の一部黒部市体協からの強化運営費、各企業・個人からの寄付金を充てている。運営委員長には黒部市長、後援会長に市商工会議所会頭、運営委員には観光協会の会長や市教育長が名を連ね、まちをあげての運営がなされている。

貢献の心

 地域からの支援を得られずに数年で姿を消すスラブチームも後を絶たない。なぜKUROBEはここまで地域の協力を得ることができたのか。石川監督は「国体というきっかけが大きいでしょう」という。

 しかし、それだけではないだろう。地域貢献に対するチームの考え方、「地域のために何ができるか」という選手の心が支援を呼んだのではないかと私は思うのだ。

 「小中学生のバレーボール教室は断ったことがない。なんとか都合をつけて出かけている。底辺が広がらないと強化・普及はありえませんから」と石川監督が語る通り、小中学生に限らず、ママさんバレーでも、依頼があればどこへでも出かける。指導を受けた小中学生やプレーヤーががチームに親しみを持ち、地元での大会に応援に駆けつけるという。

 その他にも、黒部市で行われる「カーター記念黒部名水ロードレース」のために、練習を休んで沿道の「のぼり」800本をボランティアで作るなど、常に地元への“恩返し”を心がけている。

選手の決意

 チームの発足時から在籍し、今年3月まで主将を務めていた橋本富志子マネジャーは、こんな話をしてくれた。

 「私たちは、1口2000円の後援会費を自分で知り合いを回って集めてくる。その2000円を、どんな思いで財布から出していただいたか。それを知っているから、私たちは負けられない。以前在籍していたVリーグから移籍してきた選手は、最初は応援してもらえるのは当たり前だと思っていたみたい。でも、ここでプレーして、自然と支援者に『ありがとう』と心から言えるようになった。」

 決して経済的に余裕はなく、選手はさまざまな面で我慢が強いられる。少人数のため練習も制限され、対戦する企業チームとの待遇の差を感じることもある。しかし、選手たちは自らチーム運営の一部に携わることでプレーできることの喜びを感じ、地域からの支援に感謝し「勝って期待に応えたい」という一心でV1リーグ優勝を果たした。その活躍が共感を呼び、地域の支援をより強固なものにしたのだ。

 日本のスポーツ界は、学校や企業が「丸抱え」する形で発展してきた。しかし、今、その体質から脱却するため、新たな運営のあり方が問われている。企業が丸抱えする時代はもう終わった。選手にも変化が必要だ。スポーツは「学校、企業にやらせてもらうもの」ではなく、競技を続けるために「自分は何をするべきか」を、真剣に考えなければならない。

 KUROBEの選手たちは、一つの答えを提示してくれているように思う。

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