「子ども、すこやか スポーツ塾」スタート  一流選手が塾長全国で「一日塾」

                                            平成16年4月19日(月):読売新聞

□体動かす喜び 仲間と

 スポーツは、子どもの体と心の発達に大切な役割を果たす。しかし、便利な生活の中で育ち、塾や習い事で忙しい今の子どもたちは、体を動かす機会が減っており、体力低下などの問題が指摘されている。今年度からスタートする「子ども、すこやか スポーツ塾」は、体を動かすのが好きではない、運動をしていない子どもたちが、オリンピックやプロスポーツの元選手らと一緒に汗を流し、スポーツの楽しさや、仲間と体を動かす喜びを実感できるユニークな取り組みだ。こうした試みの意義を、国立スポーツ科学センター長の浅見敏雄さんと、元バスケットボール五輪代表で、スポーツ解説者の原田裕花さんに語ってもらうとともに、詳しい内容などを紹介する。

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 浅見俊雄:1933年10月3日生まれ。東京大学体育学科卒。小さいころからサッカーに親しむ。東京大学で体育学などの講義を担当した後、1994年からJリーグで審判委員長も務めた。現在は、日本オリンピック委員会選手強化本部常任委員として、トップアスリートの育成に力を注いでいる。文部科学省中央教育審議会委員。
 原田裕花:1968年6月5日生まれ。10歳からミニバスケットボールを始め、山口県・富田中学校、大分県・藤蔭高校で主将として活躍。社会人チームの強豪、共同石油(現ジャパンエナジー)でオールジャパン優勝3回など輝かしい成績を残す。日本代表でも主将。アトランタ五輪では、7位入賞の牽引力となった。
       
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 体力低下は本当?

【原田】友人の子どもたちがちょうど小学生くらいの年代です。私たちが子どもだったころに比べ、運動能力の低下が指摘されているようです。
【浅見】文部科学省が1964年から行っている調査では、その後10年間くらいは運動能力は伸び続けているんです。64年の東京五輪の影響で子どもたちが一生懸命スポーツをするようになったんでしょね。しかしその後は停滞気味で、85年くらいから低下傾向が続いています。
【原田】例えばどんな力が落ちているのですか。
【浅見】ほとんどすべてのテスト項目が、30年前の記録を下回っています。例えば13歳女子の1000m走の記録は、85年をピークに、2000年では25秒以上遅くなっています。
 ただ、二極化が進んでいるんです。速く走れる子の割合やタイムはあまり変わりませんが、遅い子の記録がどんどん遅くなっている。スポーツをやっている子はやっているが、学校の体育以外には、ほとんど体を動かさない子が増えています。
【原田】両極端ですね。私が子どものころは、学校が終わるとみんなで山や川、海に遊び行って遊び、自然に体を動かしていたように思います。専門的なスポーツも大事ですが、振り返ってみて体を動かす機会が大切だったと思います。でも今の子どもたちの話を聞くと、家で遊ぶことが多いようです。環境が変わったのでしょうか。
【浅見】時間がない、空間がない、仲間がいない、いわゆる「三つの間」がないとよく言われます。しかし本当にそうなのか疑問です。
 息子が小学生のころ、友達が来ているのに、いやに静かだった。のぞいて見たら、みんなでそれぞれ違うマンガを読んでいた。「仲間」はいない訳じゃない。「空間」も学校をうまく活用すればいい。三つ目の「時間」も、家の中で遊ぶ時間はある。何かきっかけがあり、体を動かす面白さを感じれば、外で遊ぶはずですよ。

□親と地域の協力重要

【原田】最近は、様々な種目を組み合わせた「総合型スポーツクラブ」の大切さが言われていますよね。アルビレックス新潟は、サッカーだけでなくバスケットボールのチームも持っています。複数のチームがあれば、子どもたちはいろいろなスポーツを体験できる。幼児のエアロビクス教室、キャッチボール教室など、個性的な取り組みも広がっています。とてもいいことですね。

 多くの選択肢を

【浅見】幼稚園から小学生くらいまでは、いろんなことをやって遊ばせるのが大事だと思います。遊びの中でボールを扱ったり、かけっこをしたりして、その中から関心のあるスポーツを選んでいくという形が望ましいですね。
【原田】親のかかわりも大切だと思います。子どもはスポーツをやりたいと思っても、親の方がクラブ活動に付いて行くのがおっくうになってしまって、スポーツ通いに賛成しないこともあるそうです。食事面での配慮も含め、親の協力、考えが大きく影響していきます。

 得たもの大きい

【浅見】ところで、原田さんがバスケットボールをやっていてよかったなと感じたことは何ですか?
【原田】家族に共通の会話ができたことですね。優勝すればみんなで盛り上がるし、けがをすればみんなで心配してくれる。逆説的ですが、スポーツでけがをして、健康の大切さもしみじみ感じました。こうしたことを乗り越えて、目標がわいたり、乗り切ろうという気持ちになった。
【浅見】子どもの時にいろんなことにチャレンジして、自分ができなかったことができるようになる喜びは何ものにも代え難い。それを感じる一つの良い「場」が遊びであり、スポーツなんですね。
【原田】「一日スポーツ塾」でも、仲間と競争しあうようなゲームの要素を加えて、達成感を感じてもらえるように工夫していです。短い時間でも、表情や目つきが変わってきますよね。

 

□「専門性」より「交流」を 地元密着型クラブ各地に

 「オッケー、完ぺき」。鈴木彩華さん(7)が逆上がりで鉄棒をぐるりと一回転し、両手を広げて着地のポーズを決めると、インストラクターの西牟田康子さんから声がかかる。彩華さんがうれしそうな絵顔を見せた。

 東京都世田谷区にあるコナミスポーツクラブ二子玉川。ここでは、週に5日、鉄棒やマット、跳び箱などを取り入れた「体育スクール」が開かれている。特定の競技を練習するのではなく、基本的な腕力、瞬発力、回転感覚などを身につけるのが目的だ。

 ここを運営するコナミスポーツ(本社・東京)は、2002年10月、子ども向けのスポーツ教室を再編成、「運動塾」としてスタートした。年齢に応じた基礎体力や技術だけでなく、友達作りや周囲の人との協調性も身につけられるよう、水泳やテニスなど競技ごとのクラスのほか、キャンプ活動などを行う「野外教室」もある。

 従来、子ども向けのクラブは、競技ごとの専門性が高いものが多かった。ここ数年は、複数の種目を経験でき、さらに地域の人との交流も活発にしようという狙いの取り組みが民間のクラブや自治体の行事として広がっている。例えば兵庫県では「スポーツクラブひょうご」事業、富山県も同様の「総合型地域スポーツクラブ」推進事業を進めている。

 多くのスポーツクラブでは、コーチの指示を聞くなど集団生活でのルールや自立心を身につけることも目標にしている。コナミスポーツクラブ二子玉川に1歳9ヶ月から通う大塚優矢くん(5)の母、裕子さんは、「新しい技に挑戦しようと、チャレンジ精神が育っているように感じます。列にちゃんと並んだり、返事をしたり、スポーツを通して得ることはたくさんありますね」と話していた。

 主な塾長の顔ぶれ(敬称略)
  【水  泳】  木原光知子(東京五輪400mメドレーリレーで入賞)
           岩崎恭子(バルセロナ五輪200m平泳ぎで金メダル)

  【体  操】  田中光(アトランタ五輪出場)
           畠田好章(バルセロナ五輪団体銅メダル)

  【野  球】  鹿取義隆(元巨人軍投手)

  【サッカー】  菊地新吉(元日本代表)
           北澤豪(元日本代表)
           都並敏史(元日本代表)

  【バレーボール】  ヨーコ・ゼッターランド(バルセロナ五輪銅メダル)
              中垣内祐一(バルセロナ五輪出場)

  【バスケットボール】  原田裕花(アトランタ五輪出場)
                加藤貴子(アトランタ五輪出場)

  【テニス】   沢松奈生子(プロテニスプレーヤー)

  【キンダーコーディネーション】  東根明人(順天堂大学スポーツ健康科学部助教授)

「一日スポーツ塾」2004年度実施予定

開催地 開催日 水泳 体操 野球 サッカー バレー
ボール
バスケットボール テニス キンダーコーディネーション
福岡  6月19日(土)
広島  6月26日(土)
神戸  7月10日(土)
札幌  8月11日(水)
名古屋  8月17日(火)
仙台  9月18日(土)
大阪 10月 2日(土)
千葉 11月 3日(祝・水)
横浜 11月27日(土)
高知  3月21日(祝・月)
         ※各地開催の実施概要、応募方法は、開催約1ヶ月半前に掲載する開催エリアの朝刊及びヨミウリ・オンライン
         (http://www.yomiuri.co.jp/sportsjuku/)で発表します。問い合わせは、スポーツ塾事務局(電話03−5816−
     3050)へ。

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