女性スポーツ白書2004 家庭もバレーも楽しむ 
       元五輪代表・樹里さん  「結婚=引退」の図式に変化

                                                       平成16年8月3日(火):読売新聞

 開幕を目前に控えたアテネオリンピックは、夏の五輪史上、日本選手団の女性選手数が初めて男性選手数を上回った大会として歴史に残ることになった。結婚し、出産してもなおトップで戦い続ける選手もいる。一方、地域社会でも、年齢を問わずスポーツを楽しむ女性たちのすそ野は広がっている。各地の運動場や体育館に、さまざまな女性たちの姿を追った。

 福岡県中間市の「中間体育文化センター」。170aの長身の女性がお年寄りたちと、柔らかく弾むボールを使ったソフトバレーボールを楽しんでいた。「樹里ちゃん、サーブ行くよ」。ネットの向こうから「オッケー」と明るい声が返る。

 西川(旧姓・横山)樹里さん(49)は、かつて実業団バレーボールの名門・ユニチカに所属、1976年のモントリオール五輪では金メダルを獲得した。

 引退後、結婚を機に生まれ育った北九州市に戻り、今は同い年の夫と、中学2年の息子と3人暮らし。同センターの事務職員として働き、仕事の空き時間にはソフトバレーを楽しむ。ママさんバレーチームにも所属している。

 モントリオール五輪の時は21歳。チームで一番下だった。次のモスクワは25歳。キャプテンにもなり、「ここを花道に引退をと考えていたんですけどねえ」。しかし、日本はモスクワ五輪をボイコット。結局、27歳で現役を退いた。

 今回のアテネ五輪の女子バレーボール日本代表で、最高年齢は34歳。西川さんが“引退”を予定していた25歳より10歳近く年上だ。五輪予選から戦い抜いてきた辻知恵選手には2歳の男児がいる。トップアスリートの世界で“結婚イコール引退”の図式は変わりつつある。

 「結婚後も現役なんて、私のころはこれっぽっちも考えなかった」と、西川さんは親指と人差し指で1_ほどのすき間を作ってみせた。「環境が変わってきたんやろねえ。本人の気持ちが一番大事だけど、家族の理解があって、支えてくれる人がいて。良いことだと思いますよ」

 年齢を重ねながらスポーツを楽しむ女性は増えている。笹川スポーツ財団(東京)の調査(2002年)によると、40代から60代の女性で週2回以上スポーツをする人は4割を超す。1992年の結果と比較すると60代、70代以上で、「過去1年間まったくスポーツをしなかった」人の割合が減り、「週2回以上、ややきつい運動をする」人の割合が倍増した。

 同財団情報課長代理の工藤保子さんは、「女性の働き方に関する意識が変わり、スポーツ選手もキャリアも多様化したようです子育て中心の人生から開放され、生涯にわたってスポーツできる環境も整ってきました」と話す。

 西川さんも妊娠中は休んだものの、出産後間もなくママさんバレーの活動に復帰した。「好きなんやねえ。でも、どっぷりはまりたくもない。仕事も家事も大事やからね」

 かつて世界の強豪とメダルを競ったアスリートは、仕事と家庭生活とともにスポーツを楽しみ、さらに多くの仲間たちにその魅力を伝えたいと願っている。「いい趣味だよね。運動福なんてやすいもんだし、健康的だし。私も体が動く限り続けたいですね」

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