挑戦 新話 根づけ!地域スポーツ
                                                     平成17年10月13日(木)読売新聞

 9月下旬の土曜日の朝。浜名湖の近くにある静岡県浜松市立湖東中の体育館に、「湖東スポーツ・文化クラブ」の子供たちの元気な声が響きわたった。

 「もっと高くボールを上げて!」「そこでアタック!」
 館内に4面あるバレーボールコートは、小学生と、マンツーマンで指導にあたる湖東中女子バレー部員ら70人の熱気でいっぱいだ。コーチを務める大人たちのアドバイスも飛び交う。
 サーブ練習をしていた市立伊佐見小4年の野島由理さん(9)は「中学生のお姉さんが優しく教えてくれるから、早く上手になれます」。市立和地小3年の辻村勇真君(9)は「バレーができる土曜日が楽しみ」と汗をぬぐう。
 {運動が苦手な子も多く、レベルは高くありませんが、子供たちが地域の人生の先輩と一緒に汗を流し、教室では得られない何かを学んでくれれば」。元湖東中教諭で、同クラブ事務局長の宮津好秀さん(67)は笑顔で話す。

 クラブの発足は、「学校完全週5日制」が導入された2002年4月。「土日が休みになる子供たちの居場所確保策」として地域が導き出した答えが、総合型地域スポーツクラブだった。欧州のクラブがモデルで、幅広い世代が多様なスポーツを楽しみ、交流を深めるのが特徴だ。
 湖東中の校区内住民なら誰でも参加でき、スポーツ活動は現在、バレーボール、サッカー、ソフトボール、バスケットボールの4種目。茶道や裁縫など文化活動も行っている。
 登録メンバーは大人約40人と小中学生約270人。地域が全面的にバックアップしており、約20人の役員には、湖東中の校長、教頭、PTA会長を始め、地域内の伊佐見、和地両小学校の教頭、公民館長、自治会長らが名を連ねる。活動場所は、湖東中と小学校2校、公民館の体育館など。湖東中の空き教室にはクラブハウスを設け、活動の拠点にしている。

 運営には、湖東中バレー部を全国大会出場に導いた宮津さんのかつての教え子で、地元在住の社会人ら約20人が協力。「先生が事務局長なら」と皆、手弁当で駆け付ける。
 浜松市も活動を後押しする。同市は01年度から「総合型地域スポーツクラブ育成事業」に取り組んでおり、設立の際の助言のほか、設立準備金や運営費の一部補助を行っている。市内のクラブはまだ2つだが、市は「クラブの魅力が浸透すれば、今後はさらに増えるでしょう」と期待する。

 クラブを巣立った子供たちが将来、親となり、自分の子供と一緒に再びここでスポーツを楽しむ。そんな輪が何世代にもわたって続き、地域の結びつきが一層、強くなってほしい。宮津さんは、そう願っている。

                                                      (田中靖人)

 創設に行政のサポート

 総合型地域スポーツクラブの設立にあたっては、浜松市同様、行政がサポートするケースが目立つ。
 宮城県は、クラブの支援・育成を目的に「みやぎ広域スポーツセンター」を設置。クラブ創設の際に専門の指導者を無料で派遣し、運営方法などをアドバイスする。クラブ設立後もセンターの専任スタッフが定期的に巡回相談を実施するなど、きめ細かくフォローしている。

 富山県では2003年度から、県教委などが主催して、「クラブマネジャー養成講習会」を無料で開講している。クラブの創設や運営に必要な知識について、地域スポーツを研究する大学教授らが講義する。これまでに約200人が受講している。

 

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