SPORTSクリック 民間の目で赤字減らし 公共競技場の運営
                                                       平成18年11月7日(火)朝日新聞

 公共施設の管理、運営を民間に委託する「指定管理者制度」。その制度の活用が、スポーツ施設でも広がっている。民間のアイディアによって、赤字を改善しようという狙いだ。今年度からプロ野球千葉ロッテが千葉市所有の千葉マリンスタジアムをサッカーJ1鹿島が茨城県立カシマサッカースタジアムを、運営。一般市民中心の特定非営利活動(NPO)法人が地元 施設を任される例もある。その試行錯誤の動きを迫った

ショップ一新、収入増

 千葉マリン内にある「マリーンズストア」。今季、試合がある日には、商品を求めるファンが列をつくり、入店まで待たされることもあった。

 5年契約、委託金ゼロでロッテは指定管理者となった。球場内のビジネス展開を自身で判断できるようになり、ショップを一新。飲食店を入れ替え、スポーツバーもオープンさせた。
 昨年度までは、球場を運営していた第3セクターに球場使用料などを払ってきた。昨年度は、入場券収入の約18%にあたる約3億1千万円。その負担はなくなったが、光熱費、人件費などは自前になった。
 だが、商品を卸しただけの昨年度と違い、グッズショップの収益はすべて球団に入る。昨年に比べて売り上げは倍増。球団関係者は「順調な滑り出しだと思う。」

 一方、千葉市側にとってはどうか。市公園管理課によると、04年度はロッテからの使用料を得ても約5500万円の赤字。そおの負担がゼロになった。売店の使用料、看板など約1億2千万円の目的外使用料も入ってくる見込みだ。
 J1鹿島は、年間8300万円の委託料を茨城県から得てカシマサッカースタジアムの運営を請け負った。スタジアムの利用料収入は、9割以上を鹿島自身が支払っているが1億2700万円。鹿島はこの利用料と委託料を管理費に充てるが、昨年度の管理運営費2億2500万円はまかなえない。鹿島は合理化などで1500万円の節約を目指し、収支とんとんで運営したい考えだ。
 鹿島にメリットはなさそうに見えるが、スタジアムの2番ゲートを「住友金属ゲート」と命名することで、スポンサー料を増やすことができた。
 県は年間約1億円だった負担を2千万円近く減らせる計算となった。

NPOに任す例も

 三菱総合研究所が4〜5月に1890の自治体に指定管理者制度の運用状況について、アンケートしたところ、706自治体から回答があった。指定管理者制度で運営するスポーツ施設に関しては、1976ヵ所についての解答があった。指定管理者はロッテや鹿島、スポーツクラブなどの企業が20.7%、財団法人などが56.7%。まだ3.7%だがNPO法人に任せている例があった。

 宮城県のNPO法人多賀城市民スポーツクラブ(SC)は昨年4月から3年間、市総合体育館と市民プール、テニスコートの指定管理者となった。1年の運営費は約1億5千万円。市直営時の平均額でスタートした。
 小規模団体は自前の施設を持てないのが悩みだが、指定管理者になったことで、クラブが施設利用者の要望を吸い上げた事業を増やすこともできる。同SCが新設したジュニア用の水泳選手育成コースは「定員がすぐ埋まった」という人気コースとなった。

試合のない日どう稼ぐ

 ただ、大幅な事業拡大には課題が残る。ロッテの本拠試合は68、鹿島は25程度。試合のない日をどう収益に結びつけるか。大型施設を抱える指定管理者の悩みだ。
 ロッテは草野球への球場開放などしか具体的な策はない。鹿島は健康講座を開いたり、子ども対象にスタジアム内の見学ツアーを企画したりする。しかし、契約の切れる5年後、継続にならない可能性もあり、大規模な投資は難しい。
 運営を工夫しようとしても条例が足かせになるケースもある。
 多賀城市民SCの場合、体育館の利用料や使用時間が条例で定められているため、サービスを向上させても収入増に直結しない。
 それでもSCの阿部福次事務局長らは「安かろう悪かろうではダメ。制約がある中で利用実績を上げ、行政からの信頼を得られるかどうかが鍵」と話している。

▽指定管理者制度▽
 03年に地方自治法が改正され、公共施設の運営や管理に民間企業、NPOなどが参入できることになった。民間のノウハウを生かし、コスト削減やサービスの向上を図ることが狙いで、小泉改革の一環で導入された。

 

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