あしたのかたち 54 スポーツ21世紀 改定スポーツ振興基本計画@
                                                      平成18年10月21日(土)毎日新聞

官民一体に懸念

 日本武道館の青木勝彦専務局長は「風」を感じている。改定されたスポーツ振興基本計画には、武道の指導について新たな文言が加わった。
 「伝統や文化を尊重する態度を養うとともに、自分を律し、相手を尊重するなど人間性を培う上で有効であり、その専門的指導を行うことができる人材を確保する」

 改定に先立ち、文部科学省の中央教育審議会スポーツ振興小委員会は関係11団体からヒアリングをした。青木事務局長は武道による人づくりの重要性を訴え、「学校教育における武道の振興を明示してほしい」と述べた。青木事務局長は言う。「いじめや不登校などの問題を解決するには、もっと人と接し、交わることが大事。礼に始まり礼に終わる武道は心と体を一体的に作り、規範意識も身に着く。中学と高校の正課必修科目として少なくとも週1回は武道に触れてほしい」

 学校体育の充実は、子どもの体力向上に向けた「国民運動」の柱の一つ。同志社大学の横山勝彦教授(スポーツ政策)は「スポーツが手段に終わってしまわないか」と疑問を投げかける。柔道経験者でもある横山教授は武道の価値を認めながらも、「スポーツ振興に『愛国心』という言葉はそぐわない」と話す。
 第2次世界大戦中、政府は競争遂行のため国民に武道の修練を奨励した歴史がある。戦後、学校武道はGHQ(連合国軍総司令部)によって禁止され、武道組織を総括していた大日本武徳会は解散を命じられた。「官民一体の武道振興」は戦前を想起させるとの指摘に対し、青木事務局長は「アナクロニズムではない。日本人としての『型』を持たないと、国際社会の中で根無し草になってしまう」と反論する。

 スポーツは本来、個人が自発的に楽しむもの。国民運動として強制すべきものなのか。「大事なのは議論すること」と横山教授。必要なのは「異議申し立て」の応酬だ。

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 スポーツ振興基本計画が改定され、生涯スポーツ社会の実現、国際競技力の向上に加え、新たな政策目標として「子どもの体力の向上」が打ち出された。21世紀におけるスポーツ政策の方向性などを探る。

 

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