あしたのかたち 55 スポーツ21世紀 改定スポーツ振興基本計画A 
                                                         平成18年10月28日毎日新聞

正念場の総合型クラブ

 多種目、多世代を掲げる総合型地域スポーツクラブが正念場を迎えている。2010年までに全国の各市町村に少なくとも一つは育成するとした目標は3割程度にとどまっているにもかかわらず、改定されたスポーツ振興基本計画は「さらなる取り組みが求められている」と修正しただけ。
 市町村合併によって、00年9月の計画策定時に約3000あった市区町村数は約1800に減少した。福島大の黒須充教授(スポーツ社会学)は「目標値が同じであれば、下方修正になる。自治体にとってはハードルが低く設定されたことになり、育成への意欲が薄れてしまう」と危ぶむ。

 取り組みへの温度差がある中で黒須教授が評価するのが富山県だ。旧35市町村(現在は15市町村)のうち34市町村に計48クラブがあり、今年度中には全市町村に設立される予定だ。総会員数は約3万4000人で、人口比率は3%を超える。
 県は00年富山国体の剰余金など8億円で設けた基金を活用して04年度から財政支援を行っている。準備、育成、定着の計5年間で金額は最高320万円。だが、補助事業は08年度で打ち切られる予定で、09年度以降は「各クラブの創意工夫に任せる」(県スポーツ課)という方針だ。

 98年設立のNPO法人「ふくのスポーツクラブ」(南砺市)は今年4月、体育館など12施設の指定管理者になった。人口約1万4700人の旧福野町内で会員数は約3580人。地域に根を下ろした存在として認められている。運営費は昨年度の約2200万円から今年度は約6200万円に増え、新たに4人の職員を雇用した。寺井克明事務局長は「内容をいかに充実させるか。地域にもメリットとなる事業を展開したい」と話す。

 総合型クラブの存在意義とは何か。黒須教授は「住民の目線に立ち、生涯を通じてスポーツを楽しめる仕組みを作らなければならない。そのためには、自治体や体協、競技団体など既存組織の変革に踏み込むことも必要」と指摘する。スポーツを楽しむ環境が整えば、子どもの体力向上や高齢者の医療費削減にも波及していく。クラブづくりは社会を変える試みでもある。

 

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