裾野広げる知恵を 体育の日
                                                      平成18年10月9日(月)朝日新聞

 子どもの体力低下が叫ばれて久しい。スポーツを楽しむ機会が少なくなっているのも、その理由のひとつだ。
 学校5日制で体育の授業が減った。教員の平均年齢があがり、中学では部活動の引き受け手が減っている。少子化の追い打ちで廃部に追い込まれることも珍しくない。
 そんな流れに歯止めをかけようと、期待されているのが「総合型地域スポーツクラブ」だ。もともと生涯スポーツの場だが、これを活用して子どもたちを積極的に参加させようという試みだ。

 岐阜県神戸町の「ごうどスポーツクラブ」は、町内5つの小、中学校やスポーツ少年団と連携している。クラブに登録する30人の指導者の多くが中学校の部活動を指導したり、スポーツ少年団を率いたりしている。
 中学校は土日の部活動を休み、生徒が地域クラブに参加しやすくしている。少年団の子どもたちも、クラブで同じ指導者から習ったり、別の競技に挑み、自分に合う種目を探したりしている。
 クラブの小倉弐郎会長は「大人の目のないところで遊ばせられない、というのが現代の親の不安だ。そうなると、人口密度の低い地方のほうが子どもをスポーツから遠ざけている」と指摘する。
 クラブが動き出して4年。人口2万余りの町で会員は約2600人になった。町内の小中学校で運動能力テストをさせると、全国平均を上回る学年は数えるほどだという。それでも、少しずつ改善していると自信をみせた。

 都会で成果をあげているのは東京都杉並区の「杉並アヤックスサッカークラブ」だ。芝生のグランドを使えるのが強み。杉沢幹生理事長らが芝生管理の資格を取り、区の芝生グラウンドの委託管理を請け負った。
 「緑には特別な力がある。グラウンドに入るとみんな座り、感触を確かめていうんです。『芝生っていいな』って」。転ぶのをこわがらないから、技術の幅も広がる。自然から遠ざかる子どもの思いを活動に取り込んでいる。

 総合型クラブは90年代半ばから広がった。企業や学校がスポーツを支えるだけでは、裾野は広がらないとして、住民が運営の中心になり、受益者負担を原則とする総合型クラブが導入された。
 01年から始まった文部科学省の「スポーツ振興基本計画」では、中核事業に位置づけられた。昨秋までに2187ヵ所、最終的には自転車で通える生活圏を単位に計1万ヵ所を目指している。
 しかし、きちんとした青写真や十分な財政的な裏付けもないまま、十分な活動ができないところもある。
 「地域の実情に合うものを作るほど、そのクラブの能力は高くなる」。愛知県半田市で創設11年目を迎えた「ソシオ成岩スポーツクラブ」の榊原孝彦理事は、クラブを発展させるコツを語る。

 体力の向上に、地域の知恵が試される時だ。

 

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