あしたのかたち59 スポーツ21世紀 改定スポーツ振興基本計画E
                                                      平成18年11月25日(土)毎日新聞

量から質への転換

 総合型地域スポーツクラブの数は準備中を含めると、全国で2200を超える。スポーツ振興基本計画が掲げる「2010年までに全国の各区市町村に少なくとも一つ」の目標に向け、徐々にではあるが、近づく。
 だが、計画で明確に記された目標は、クラブの数や、週1回以上スポーツを行う成人を50%にするという程度。財政、要員、施設、関連する条例など最低限整備すべき 条件は示されていない。
 これまでは順調に運営されているクラブの事例がサンプルとして紹介されることが多かった。文部科学省のクラブ育成マニュアルにも数々のクラブの様子が記されている。しかし、事例に頼る「エピソード主義」は紹介者がどう表現するかで評価でが変わる。何を基準に成功と判断するかも、あいまいなままだ。

 日大の水上博司助教授(スポーツ社会学)は「国がクラブのあるべき姿を具体的に示した上で、客観的な評価の仕組みを作るべきだ」と指摘する。クラブは収支のバランスを保ちながら、市民の要望に応えるサービスを提供し、利用者(会員)を増やしていかなければならない。そのためには定期的な検証と改善が欠かせない。しかし、現状ではクラブを作ることが重視され、一定水準以上の運営を維持する策が後回しになっている。

 来年春までに平成の大合併前の旧35市町村すべてにクラブが設立される富山県では、各クラブによる自己評価が試みられている。県広域スポーツセンター(SC)が会員の要望の把握、地域との連携、財政状況など175項目の「育成チャック表」を作成。会員1人が1回利用するためにかかるコストを「スポーツ原価」として試算する方法なども示す。義務化はしないが、活用を勧めている。担当の白倉香理さんは「運営の充実や自立には、まず現状把握が必要。クラブが自分たちを知ることで市民の理解も進む」と話す。
 水上助教授も富山県の取り組みを指示する。「ただ、計画、実行、評価をすべて行政や当事者がやっては的確な改善ができないことも多い」と、第3者による評価の必要性を指摘する。クラブも「量」から「質」への転換が求められている。

 

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