あしたのかたち 56 スポーツ21世紀 改定スポーツ振興基本計画B
                                                       平成18年11月4日(土)毎日新聞

幻想の「打ちでの小づち」

 「打ち出の小づち」は幻想だった。日本オリンピック委員会(JOC)の福田富昭・選手強化本部長は苦々しげに振り返る。「何十億円もの助成をスポーツ界は『使いきれるのか』と当時の文部省に言われたものだったが、話は全く違った」

 スポーツ界の発展に寄与することを目的に01年3月に販売が開始されたのがスポーツ振興くじ(toto)だった。スポーツ団体への助成金は最初の02年度こそ57億7965万円が交付されたが、今年度は1億1800万円に落ち込んだ。これも収益によるものではなく、払い戻しされなかった無効金が原資だった。
 totoは、スポーツ振興予算の獲得に苦しんでいた文部省(現文部科学省)が長年求めていたと言われる独自の財源だった。その使途を裏付けるものとして00年9月に策定されたのがスポーツ振興基本計画。「総合型地域スポーツクラブの全国展開」が全面に出されたのも、財源の配分先を明確にするためだった。
 しかし、売り上げ不振のため助成金は現在、総合型クラブ創設に行き渡らなくなった。そんな苦しい台所事情を反映するかのように、今回の改定では助成金がほとんど不要な「子どもの体力向上」がトップ項目に押し出され、総合型クラブは数値目標も含めて後退してしまった。日本体育協会の根本光憲クラブ育成課長は「totoの効果を実感できたのは1〜2年だった。でもかえってよかったのかもしれない。多額の助成金を投入すると、クラブが依存してしまうから」と話す。現場は幻想を捨て、先を見すえている。

 totoを運営する独立行政法人「日本スポーツ振興センター」は9月、りそな銀行への未払い金について、みずほ銀行を幹事とする18金融機関から約190億円を借り入れるなどして返済した。金融機関はtotoの将来にかけた形だ。しかし、収益を出すには年間200億円以上の売り上げが必要とされ、今後10年間、約20億円ずつ返済するローンも残っている。「ダメだから切り捨てるのでなく、各競技団体に販売促進に協力してもらいたい」とJOCの竹田恒和会長は話す。財政支援なき計画のぜい弱さが際立つ。

 

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