スポーツの輪 ・・2
                                                     平成18年10月12日(木)読売新聞

 運動能力育てる教室  「遊び」の要素盛り込んで

 「カンガルーのように跳んで」「クマのように歩きましょう」「今度はカエル」−。長野県上松町の小学1年、山本世津子ちゃん(6)は、保育園の年長組みだった昨年度、 町内の総合型地域スポーツクラブ「木曽ひのきっ子ゆうゆうクラブ」の指導で、動物のまねを通した運動プログラムを体験した。
 このプログラムは、跳び箱を跳ぶ動作を、両足をそろえて跳ぶ、手で体を支える、空中で脚を開く−などと分解、それぞれを動物の動きで練習するもの。世津子ちゃんはこうした運動を繰り返し、普通は小学校で覚える跳び箱を入学前にマスターした。
 母の英子さん(44)は「怖がりなので、最初はどうかなと思った。家でも練習をしたが、安心した」とほっとした様子。クラブが小学生を相手に開く教室にも親子一緒に参加するつもりだ。
 クラブがプログラムを始めたのは、4年前。跳び箱が苦手で運動嫌いになるケースが多いため、早い段階から遊びを通して学ばせようというものだ。辺見元孝事務局長は「3〜8歳くらいの間に、体を思う通りに動かすための運動神経が発達する。この時期に跳び箱のような様々な動きを組み合わせた、立体的な運動をさせる意味合いもある」と話す。

 子どものスポーツ離れや体力低下は指摘されて久しい。文部科学省は9月から新たな対策として、親も巻き込んだセミナーを全国各地で開催。子どもの現状を伝えるビデオを放映し、家庭でも簡単に取り組めるダンスや運動も紹介し始めた。日本体育協会も昨年度、下は2歳からの運動プログラムを提供できる人材育成を始めるなど、多方面で動きが活発になってきた。
 こうした中、総合型クラブへの期待も高まっている。幼児から小学生への発達に合わせながら一貫した指導ができるほか、様々なスポーツを組み合わせて、楽しみながらバランス良く運動させることができる力を持つからだ。また、それぞれの地域の実情に合わせたプログラムを組めるのが利点だ。
 鹿児島県和泊町は沖永良部島にあり、海に囲まれて自然は豊かだが、子どもの体力低下は他の地域と同じ。離島のため、逆にスポーツ指導者が少ないという短所もある。そこで、まず子どもに運動の機会を与えようと、「元気!わどまりクラブ」が専属の指導員を県外から呼び、うんていやマットなどを使い、遊びを通じた教室を開いている。
 子どもの体力問題に詳しい山梨大の中村和彦助教授(発育発達学)は「幼児期から小学生までは、いろいろな遊びの中で運動能力を育てることが大切。それが難しい現代では、そのための場とプログラムを意図的に提供する必要があり、総合型もその場となりうる。ただ、子どもだけではなく、保護者の意識を高めることも必要」と話している。

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