松瀬学のスポーツ時評 「ワセダクラブ」がマルチ体験
                                                        平成19年4月3日(火)毎日新聞

異種目融合で才能発掘

 壮大なる挑戦である。早稲田を軸とした地域密着の総合型スポーツクラブ、『ワセダクラブ』が新たなクラスをスタートさせた。
 「マルチスポーツ体験会」なるもので、ラグビーやレスリング、ラクロス、アーチェリーなど8種類のスポーツを週替わりでやろうというのだった。

 なんだかおもしろそうだ。3月下旬、東京・上井草のグラウンドにクラスの初日をのぞきにいった。この日はサッカーだ。午後7時、まばゆい照明の下、15人ほどが集まってきた。
 初心者大歓迎。年齢おかまいなしだから、4歳から62歳までバラバラである。「まずボールになれましょう」とコーチのやさしい声がとぶ。ドリブル練習がはじまる。おっ、うまっ。

 コーチはそれぞれぞれの競技の専門家や大学OBが担当する。参加は無料。「優良でやろうと思ったらだれも食いついてこなかったから」とワセダクラブの後藤禎和事務局長は笑う。「いろんなスポーツに挑戦するチャンスを与えてあげたい。そうすれば、子どもたちが、自分にあったスポーツに出会える可能性が高くなる。複数のスポーツをやったことでアスリートとしてのレベルもあがるでしょう」

 ワセダクラブは2003年秋、ラグビー部の本拠移転をきっかけに発足した。同ラグビー部の清宮克幸前監督(サントリー監督)が専務理事を務める。
 ウリは芝生のグラウンドなど恵まれた環境である。クラブはサッカーやボート、アメリカンフットボールなど16競技の体育会が参画し、うち7競技でスクールが開催されている。ラグビースクールは300人強の人気を誇り、スクール全体では1千人を超える。

 目指すは欧州のごとく、異種目融合の総合スポーツ型である。その象徴として、この体験クラスがついに始まったのだ。
 東京都中野区の東郷雅さんは子ども二人と一緒に参加した。 ラグビーとレスリングのスクールのメンバーでもある。雅さんは子どものころ、父親に野球しか許してもらえなかった。「だから、自分の子どもたちには、ちっさいうちはいろんなスポーツにトライさせてやりたいんです」
 雅さんの二男、10歳の由羽丸くんはやんちゃだ。「ラグビーもレスリングもたのしい。タックルして相手を泣かすのがおもしろい」

 この日最高齢の62歳、会社嘱託の小谷明さんも元気だった。汗を流すだけでなく、世代間の交流を楽しむ。「とくに団塊世代が会社をリタイヤして、こういうクラブに入ってくれれば各世代の交流が活発になると思います」
 なるほど、では子どもの才能発掘と世代間交流の一石二鳥となるわけだ。
 ところで疑問がある。なぜ人気の野球部はワセダクラブに協力しないのだろう。独自路線を通すのもいいけれど、ヨコの連携も大切ではなかろうか。

 

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