インサイド 五輪ボイコット30年 第4部 文科省「スポーつ立国戦略」の課題【4】
                                                      平成22年10月8日(金)毎日新聞

引退選手の派遣に壁
 8月3日、文部科学省が策定した「スポーツ立国戦略案」をテーマに行われた中央教育審議会の分科会。引退したトップ選手を総合型地域スポーツクラブに派遣する戦略の目玉事業に対し、ソフトボール元日本代表監督の宇津木妙子氏から注文がついた。「アスリートの派遣は継続が大事。単発的な派遣では、人づくりはできない」

 文科省は来年度の概算要求、元トップ選手らを配置した拠点クラブの育成などに約27億円を計上した。狙いの一つは先週のセカンドキャリア(第二の人生)の確保。そして、広域市町村圏(全国300カ所程度)の拠点となる総合型型クラブに競技経験者が豊富な選手を指導者として配置することで、会員の確保に悩むクラブの起爆剤にしたいという思惑もあるようだ。

 同省は、クラブが使用するスポーツ施設の不足を学校施設の有効活用によって補う考えだが、元トップ選手をクラブから小中学校にも派遣することによって、クラブに対する理解が深まり、学校解放が進むことも期待している。しかし、クラブがそのような人材を最長的、安定的に確保できるか課題が残る。

◇クラブで雇用困難
 明日ルートの再就職事業に携わる日本オリンピック委員会(JOC)の荒木田裕子理事は「現在の総合型クラブが、アスリートが引退した後の受け皿になってくれるのは嬉しいが、その場合、きちんと整備された(年金や社会保険などの)社会保障が必要。JOC専任コーチなど多くの指導者が国から支援を受けているが、社会保障はない」と語る。
 鈴木寛・副文科相は「約3000ある総合型クラブのうち優勝でこようできているのは微々たるもの」と話、将来にわたる雇用の財源は、税金よりも、市民の寄付や公共向けサービスからの収入で確保する仕組み作りを提案する。今回の戦略で強調されている「新しい公共」という考え方だ。鈴木氏は具体案として国から各家庭に支給される「子ども手当」を、年収1000万円以上の家庭にはクラブに寄付してもらうプランなどを披露した。

 しかし、寄付でどれだけ賄えるかは未知数だ。早大スポーツ科学学術院の間野義之教授は「寄付に頼るよりは、総合型クラブのサービスを上げることが大切。例えば学校のプールが屋内化され、通年使えるようになれば、総合型くらぶの会員数と収入は飛躍的に増える」と指摘する。その場合にも、条件整備のための支援は不可欠だ。

◇財源、寄付頼み?
 戦略には地域のクラブに所属する中高生に対して、全国中学校大会や全国高校総体への参加を検討することも盛り込まれた。現在は学校単位での参加だが、クラブ所属の選手にも門戸を広げる方向性を打ち出している。もともと国の施策として95年に育成モデル事業がスタートした総合型クラブは、少子化の影響で学校の部活動が揺らいだことを受け、新しい受け皿をつくる狙いもあった。

 間野教授は「やりたいスポーツが学校の部活動にない子どもがいる状況で、その機会を与えるのは大切」と前向きにとらえたうえで、「既存の部活動とクラブがグラウンドを分け合いながら共存していけばいい。そのためには派遣されるアスリートが指導者の資格を取る仕組みをつくることが必要」と語る。

 

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