スポーツ政策 転換点
                               平成22年7月21日(水)朝日新聞
 

文科省が戦略案

自民時代は「競技力強化」

生涯スポーツ重視へ

 文部科学省は20日、スポーツ政策の方向性を示す「スポーツ立国戦略」の原案を発表した。総合型地域スポーツクラブを活用し、運動できる環境を整えるなど「生涯スポーツ」の充実が柱となっている。五輪でのメダルの数が国の力を示すとして「競技スポーツ」のレベルアップを明確に打ち出した自民党政権時代とは、色合いが異なる中身となった。しかし、国が進めてきた総合型クラブは、計画通りに展開できているとは言い難い。

 文科省が「スポーツ立国」を打ち出すのは初めてではない。自民党政権だった2007年、遠藤利明副大臣の諮問機関がまとめた「スポーツ立国ニッポン」では、副題で「国家戦略としてのトップスポーツ」とうたい、五輪のメダル増を一番の目標にした。トップダウンでスポーツを活性化しようとする自民党に対し、民主党はボトムアップの色合いが強い。

 今回の立国戦略は、3月から鈴木寛副大臣らがスポーツ各団体からの聞き取り調査や視察を重ねて、まとめた。総花的な内容になっている感は否めず、五輪メダル増加も重点戦略のひとつになっている。ただ、鈴木副大臣は「総合型クラブを育てていくことが柱になる」と強調する。民主党が掲げる「新しい公共」を、スポーツを通じて実現したいとの思惑がにじむ。

 大人から子どもまでの多世代が、多種目のスポーツを楽しめる―。これが、国が描く総合型地域スポーツクラブのうたい文句だ。民間のスポーツクラブと違い、「総合型」は地域住民が会費を出し合い、NPO法人格などを取得して主体的に運営する。活動場所は主に学校や公民館。スポーツを通じて住民同士がきずなを深め、「地域力の再生」につなげることまでを視野に入れている。

 スポーツ界は今回の「戦略」をどう見ているのか。「総合型」に詳しいスポーツプロデューサーの杉山茂さんは振興の軸足を地域に移すことを評価しつつも、「成功したドイツは各クラブがクラブハウスを持つ。日本もプロスポーツ的なインフラ整備が必要だ」と、理念だけが先行し、ボランティア的運営に頼る現状の限界を指摘する。

 国民に注目されるトップ選手の強化を優先すべきだという声も根強くある。日本オリンピック委員会の福田富昭副会長は「政権が代わるたびにスポーツへの取り組みが変わると現場が混乱する。超党派で取り組んでほしい」。

  スポーツ立国のための五つの重点戦略

  ライフステージに応じたスポーツ機会の創造

  総合型クラブを軸に地域スポーツ環境の整備

  成人の3人に2人が週1回以上スポーツを実施

◆トップアスリートの育成・強化
  五輪で過去最多のメダル数(夏37、冬10)を更新

  国際競技大会の招致・開催支援

  スポーツ界の連携による「好循環」の創出

  引退後のトップアスリートを総合型クラブの指導者に

  体育授業・運動部活動における外部指導者の充実

  公平・公正なスポーツ界の実現

  日本スポーツ仲裁機構を機能強化し紛争を迅速に解決

  ドーピングのないクリーンなスポーツの実現

  社会全体でスポーツを支える基盤整備

  地域でのスポーツ活動を推進し「新しい公共」を形成

 スポーツ分野の顕彰制度の拡充

 

 

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