インサイド 「次代の針路」第2部 中学部活の再建策[2]
                               平成22年7月14日(水)毎日新聞

 

総合型クラブと連携

 「もう一本」。「サーブはもっと鋭く」。大分県南西部の山あい、大分市野津原(のつはる)地区にあるテニスコートで、中学生たちが声を掛け合いながらボールを追う。週5日の練習に参加するのは市立野津原中のテニス部員9人だ。昨年秋の県新人中学生大会の女子ダブルスで優勝した3年生と2年生のペアもいる。

 全校生徒82人という小規模校の野津原中にとって、県レベルでの優勝は初。指導するのは顧問の教諭ではなく、総合型地域スポーツクラブ「七瀬(ななせ)の里Nクラブ」の波多野浩さん(48)。日本体育協会公認テニス指導員の資格を持つ競技歴30年超のベテランで、市役所勤務を終えた夕方から毎日、コートに立つ。部員は学校ではなく、このクラブで指導を受ける。

 総合型地域スポーツクラブとは、年代にとらわれず各種競技に取り組めるクラブのこと。00年に策定された国のスポーツ振興基本計画では10年間で各市町村に最低一つは創設する目標が盛り込まれたが、09年度の統計では創設準備中のクラブを含めて設置市町村は64.9%(準備中を除くと47.1%)。地域に浸透するには学校との連携が大きな課題だ。

 「Nクラブ」の設立は旧野津原町時代の04年。現在、小学生から70歳代まで約800人の会員がおり、57人の指導者のもとで陸上や球技、レクリエーション種目など20以上の競技が楽しめる。

 野津原中の「部活動支援」は、当初からクラブ活動目的の一つに盛り込まれている。クラブ設立に携わり、当時同中教諭だった事務局長、森慎一郎さん(49)=現大東中教諭=が、指導者不足や少子化による生徒数の減少で部活動の存続に危機感を抱いており、両者の連携を提案した。

 「クラブからの指導者を派遣したり、逆に部活動をクラブに移管して地域で運営すれば子供たちが安定してスポーツに取り組める」。創設準備期間中に、保護者と学校、クラブ3者の間に立ち、教師が立ち会わずに部活動として成り立つのか▽事故の場合の責任の所在―などの問題を明確にし、3者が納得してスタートできるよう説明などに奔走した。

 現在、同中には六つの運動部がある。Nクラブに運営を移管しているのはテニス部のみで、柔道、剣道部にはクラブから指導者が派遣されている。また部員2人のサッカーや、部がない野球を希望する生徒は、Nクラブで他校の生徒に交じって活動している。

 日本体育協会クラブ育成課の金谷英信係長によると、総合型地域クラブが学校の部活動を支援する例は全国的に見られるが、Nクラブの場合、現場の教師が主体となり相互の連携を作り上げた点が「画期的」だという。

 設立から7年目。課題もある。クラブを活用する場合は、月2000〜5000円の参加費が必要になる。また「あいさつなどの教育的な面まで目が届かない」と心配する指導員もいる。野津原中の本田雄二校長も「部活は教育の一環で教員が見るのが基本」との思いがあるだけに、見守る胸中は複雑だ。

 野津原中の卒業生でもある森さんは、当時も野球部がなかったため、「泣く泣くサッカー部に入った」経験をした。「小規模校だからという理由で子供の可能性を奪いたくない。地域との部活動の連携を深め、子供にとってベストな形を追い求めたい」という。

 

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