基本法成立 変わるスポーツ界 中
                                                      平成23年6月30日(木)読売新聞

トップ選手 地域クラブに
 文部科学省は競技スポーツと地域スポーツの「好循環」を目指している。具体的には、こんな構想だ。
 トップ選手がセカンドキャリアで、総合型地域スポーツクラブの指導者として選手を育成する。欧州のように、地域のクラブでトップ選手と市民が一緒にスポーツをする環境を作れば、クラブを中心に地域は盛り上がる。指導者の道が確保されていれば、子どもたちもスポーツを生涯の仕事に選びやすくなる。基本法では、この「好循環」の言葉が前文に盛り込まれ、国や地方公共団体が地域スポーツクラブを支援することが条文で規定された。

 アテネ五輪の競泳銀メダリストで近大職の山本貴司さんは「競技を終えた後に不安を抱えている選手は多い。経済状況も良くないし、今はスポーツだけをやって自分の夢をかなえるのは難しくなっている」と、国のセカンドキャリア支援を期待する。陸上・世界選手権銅メダリストの為末大選手は「選手が地元に戻り、自分のクラブを作って運営する『スポーツ起業』を国が支援してほしい」と話す。

 文科省によると、総合型クラブは、昨年7月時点で設立準備中を含めて全国に3114ある。その成功例と言われる調和SHC倶楽部(東京都調布市)の小川時雄会長は「今のクラブの目的は地域住民の交流だが、トップアスリートが来てくれれば刺激になるのは間違いない」」と、子どもに夢を与える構想を歓迎する。
 問題は財源だ。会費や寄付で何とか運営しているのが総合型クラブの現状で、国費をどこまで投じられるかによっては、スポーツを通じた地域活性化は絵に描いた餅になる。今は楽しむことを目的にしているクラブを、競技力向上の舞台にできるかは未知数だ。

 大東文化大の森浩寿教授(スポーツ政策)は「総合型クラブは、学校の部活になじめなかった時の受け皿にもなるが、今は競技団体と連携していないので所属しても公式戦に出られない」と指摘する。
 「高校総体はクラブチームの選手は出場できないので、高校の大会であって、高校生の大会になっていない。縦割りの弊害はスポーツの現場で出ている」と為末選手は言う。
 学校の部活動とクラブチームの融合は、一緒に参加できる大会も開催されているサッカー界が先進的だ。地域のクラブに重点が置かれたスポーツ基本法が制定されたことで、双方の繁栄を目指した取り組みは今後、各競技で求められることになりそうだ。

 

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