基本法成立 変わるスポーツ界 下
                                                        平成23年7月1日(金)読売新聞

「不公正」防ぐ力に
 誰もがスポーツを楽しめる権利を「スポーツ権」という。プレーするだけでなく、見る、支えることも含まれる。基本法では、この権利が「スポーツを通じて幸福で豊かな生活を営むことは、全ての人々の権利」と明記された。
 日本弁護士連合会(日弁連)は、基本法制定にあたって文部科学省に意見書を提出している。そこで強く求めたのが、この権利だった。意見書を取りまとめた伊東卓弁護士は「スポーツの社会的な影響が大きくなった。スポーツ団体はコンプライアンス(法令順守)やガバナンス(統治能力)が求められ、権利侵害があってはならない」と話す。

 スポーツ界は、指導者と選手、教員と生徒など上下関係がネックとなり、問題が表面化しにくい。指導される側は、「おかしい」と思っても公言しずらい立場にある。これを救うのがスポーツ権だ。法に規定されたことで、スポーツをしている人が問題意識を持つようになり、スポーツ団体も姿勢をただすことで「不公正」を未然に防ぐ抑止力の効果が期待されている。
 日弁連は、スポーツ界でみられる連帯責任の考え方も、競技者の権利侵害につながると指摘する。伊東弁護士は「自分の行為の責任を負うのは当然だが、連帯責任は、なぜ責任が問われるのか、根拠がわからない」ろ語る。
 2009年に日体大陸上部で跳躍種目の部員の大麻事件が起きた。同校は関東学生陸上競技連盟の裁定で出雲駅伝などに出場できず、箱根駅伝のシード権を失った。日弁連は、この処分は不祥事を行っていない部員に連座制に基づく処分が科せられたもので、部員の権利を侵害するとしている。

 基本法にスポーツ権が盛り込まれたことで、競技者とスポーツ団体との紛争解決を目的に2003年に設立された日本スポーツ仲裁機構の役割が重要になってくる。
 ただ、ここでの仲裁は、競技者が望んでもスポーツ団体が応じないと成立しない仕組みになっている。同機構によると、仲裁に応じると決めているのは、日本オリンピック委員会、日本体育協会の加盟・準加盟団体でさえ、わずか45%。同機構は競技者に十分に活用されていなかった。
 これを踏まえ、基本法では、国が仲裁機関を支援すると規程され、スポーツ団体に対し、紛争の迅速・適正な解決も求めている。道垣内正人機構長は「この8年で15件の仲裁判断を行ったが、その下には150件ほどの相談があった。基本法はスポーツ団体が仲裁に応じる基盤になる」と話している。

 

戻る