とやま日曜特番 総合型スポーツクラブ充実
                                                     平成24年9月23日(日)北日本新聞

健康づくり・交流気軽に
 スポーツの秋到来。県内では、総合型地域スポーツクラブ(総合型クラブ)が「平成の大合併」前の旧35市町村に網羅され、子どもからお年寄りまで気軽にスポーツを楽しめる環境が整っている。健康づくりへの関心が高まる中、住民がそれぞれの能力や体力に応じた教室に参加。住民同士の交流の場にもなり、地域の「絆」づくりにも一役買っている

ズーム? 総合型地域スポーツクラブ
 NPO法人などを運営主体に、公共施設や学校でスポーツ教室、交流行事を開く。年会費や複数回にわたる教室受講料は3千〜5千円。それぞれの地域で、年齢や性別を問わず誰でも参加できる。幅広い志恋に対応できるよう、多種目の教室を設けているのが特長。

 総合型クラブは、1995〜2003年度に文部科学省が育成指定モデル事業を導入し、全国各地で設置された。県内では06年度、旧35市町村全てに設立された。今年7月時点で59クラブがあり、会員は3万9607人に上る。全市町村にクラブがあるのは富山のほか、兵庫、秋田、長崎など全国で7県のみだ。

□気持ち若々しく
 富山市花木体育センターを拠点にする「くれは総合型スポーツクラブ」は中高年向けのメニューを充実。太極拳や卓球、フレッシュテニスまど7種目でそれぞれ10回コースの講座を設け、春、秋、冬の季節ごとに実施している。募集定員20〜45人がすぐに埋まるほどの人気ぶりだ。同市茶屋町、辺城暁美さん(65)はリズム体操で汗を流す。「ストレス発散になるし、体も気持ちも若々しいままでいられる」と言う。

 子ども向けの教室に力を入れ、部活動やスポーツ少年団に近い役割を担うクラブもある。同市山室中部小学校体育館を中心に活動する「きらぴか☆スポーツクラブ」はヒップホップダンス、新体操など12教室を開催。幼児から高校生まで約180人が所属し、練習だけでなくメンバー同士で試合もする。バドミントン教室に通う朝倉桃香さん(藤ノ木小6年)は「練習日には友だちに会えるで楽しみ。試合に勝つとうれしい」と、笑みをこぼす。

□出前講座も
 出前講座や行事を通じ、住民同士の交流活性化につなげる取り組みもある。
 射水市の「NPO法人こすぎ央号スポーツクラブ きらり」は拠点の小杉体育館で約40講座を設けているほか、コミュニティーセンターや小学校、ショッピングセンターなどに講師を派遣し、教室を開いている。  
 黒河、太閤山など7カ所では毎週実施。車を運転できないお年寄りも気軽に通える。引きこもりを防ぎ、住民同士が親しくなるきっかけになっている。
 今後も公民館などを会場に、小規模な教室をきめ細かく開く考えだ。西川秋子クラブマネジャー(65)は「お年寄りが体を動かす機会が増えれば、介護予防にもなる」と力を込める。

 「くれは総合型スポーツクラブ」はスポーツフェスタやもちつき大会などを開き、子どもからお年寄りまで幅広い世代の利用者が触れ合う場としている。リズム体操に参加する辺城さんは、「教室でできた友達と一緒に昼食を取るのが楽しみ。旅行を楽しむ仲間ができた人もいる」と話す。

□会員5万人目指す
 国は今春、スポーツ基本法に基づき「スポーツ基本計画」を策定。年齢や性別、障害の有無を問わず、国民がスポーツに親しめる環境を整備する方針を打ち出した。
 国立社会保障・人口問題研究所の調査では、県内の人口は今年の108万人から25年までに100万人を割り込み、、3人に1人が65歳以上になると推計される。
 県は本年度、今後10年間のスポーツ施策の方向性を示した「元気とやまスポーツプラン」を策定し、総合型クラブの機能の充実を盛り込んだ。会員数を約1万人増の5万人にすることが目標だ。

 県総合型地域スポーツクラブ連絡協議会(とやまSCネット)の大西清征会長(74)は「指導者の特長、整備された施設など地域にはそれぞれの実情がある。それらを踏まえた活動で特色を打ち出し、地域に浸透させたい」と話している。

記者の直言 介護予防に活用を
 高齢化が進む中、県民が末永く健康に過ごすためにはスポーツの果たす役割は大きい。総合型クラブのメニュー充実や加入促進を進めることが大切だ。
 県外には、介護予防を事業を総合型クラブに委託する自治体がある。一方、県内では行政の「縦割り」で、高齢者福祉担当部局と総合型クラブとの連携は不十分だ。クラブ指導者の知識を生かし、介護予防の取り組みを拡大することが、元気なお年寄りを増やし、医療費を抑制することにもつながる。

 一人でランニングやウォーキングに取り組む傾向が強いとされる「働く世代」の加入を促進することも大切だ。幅広い世代の人が集まり、交流が生まれるのが総合型クラブの特長。地域の人間関係の希薄化が指摘されているだけに、そうした魅力をもっとアピールしてもいい。加入しやすいよう、夕方以降に開く教室を増やすことも必要だ。

 幼児期から運動神経を鍛えれば、競技スポーツで活躍するための土台にもなる。県スポーツのレベルアップのためにも、総合型クラブを通じて、子どもが体を動かす取り組みを広げてほしい。

小野寺富山大教授に聞く   体動かす習慣が大切
 県スポーツ推進審議会長として「元気とやまスポーツプラン」の策定に携わった富山大医学部保健体育科の小野寺孝一教授(64)=運動生理学に、日常生活の中でスポーツに親しむことの大切さを聞いた。

 −高齢化が進む中、スポーツの意義が高まっている。
 「健康づくりには食事とともに非常に重要な要素だ。筋力低下を防ぎ、バランス感覚や柔軟性も保つことで介護予防につながる。高齢者が総合型クラブでおしゃべりを楽しんだり、汗を流した後に仲間と食事に出掛けたりして生きがいを持てば、免疫力も高まる」

 −総合型クラブは子ども向けの教室も充実している。
 「県内の子どもの運動能力は1980年代半ば以降、低下傾向にあり、運動をする子としない子で二極化している。テレビゲームの普及で屋外で遊ばなくなったことが要因だろう。子どもは始めればすぐに伸びる。幼児の段階から体を動かす習慣を身につけ、運動を好きになってもらうことが大切だ」

 −県の昨年の調査では、県内の成人で週1回以上、スポーツをする人は41.6%にとどまる。「働く世代は運動する時間があまりなし。しかし、若いうちから体を動かすことは将来の介護予防になる。スポーツというと本格的な競技をイメージしがちだが、歩いたり、農作業したり、形を問わず体を動かす意識を日常から持ってほしい」

 

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